中国資本が関与する半導体企業に対する欧州各国の規制強化が、再び注目を集めている。中国の建広資産管理有限公司(以下、建広資産)が筆頭株主となっている英国の半導体設計会社FTDI(フューチャー・テクノロジー・デバイセズ・インターナショナル)に対し、英国政府が保有株式の強制売却を命じたことが明らかになった。
中国メディア「芯東西」が12月26日に報じたところによると、建広資産が間接的に保有するFTDI株80.2%について、2025年12月末が売却期限となる可能性が高いという。
FTDIは1992年に設立され、本社をスコットランドのグラスゴーに置くUSBブリッジICの大手設計企業である。自動車用電子機器、産業制御機器、医療機器、民生用電子機器など幅広い分野で製品が採用されており、世界市場シェアは約20%に達するとされている。

建広資産は2021年12月7日、英国に設立した持株会社FTDIホールディングを通じ、約4億1,400万米ドル(当時の為替で約29億元)でFTDI株の80.2%を取得した。この取引は公開かつ自発的な商業取引として行われ、当時は英国の関係当局から正式な承認も得ていた。
しかし、取引完了から約3年が経過した2024年11月5日、英国政府は「2021年国家安全・投資法(NISA)」に基づく「遡及審査」条項を適用し、この買収案件に対する追跡調査を開始した。その結果、「国家安全上のリスクがある」と判断し、建広資産側に対して、保有する全株式の売却を命じる最終命令を出した。
中資系半導体企業を巡る強制売却の事例は、これが初めてではない。2022年11月には、中国の聞泰科技の完全子会社である安世半導体(ネクスペリア)が、英国の半導体製造企業ニューポート・ウェハー・ファブの株式について、少なくとも86%を売却するよう、英国政府から命じられている。この案件でも理由は「国家安全への懸念」だった。
さらに今年秋には、安世半導体を巡り、オランダ政府が経営に介入する事態も起きた。9月、米商務省産業安全保障局(BIS)が輸出規制を強化したことを受け、オランダ経済・気候政策省は行政命令を発出し、安世半導体および関連企業の経営判断を制限。事実上、中国側株主の支配権を奪う措置が取られた。この問題は、その後、オランダ政府が行政命令の停止を発表し、ひとまず収束している。
一連の動きは、欧州諸国が国家安全を理由に、過去に承認した中資系企業による買収案件にまで遡って介入する姿勢を強めていることを示している。半導体をはじめとする戦略産業を巡り、経済活動と安全保障の境界線をどのように引くのかが、今後も国際社会の重要な焦点となりそうだ。
(中国経済新聞)
