2025年、中国経済は依然、複雑な局面を迎えた。公式発表ではGDP成長率が5%前後を維持し、安定成長をアピールする一方で、実体経済の体感は異なる。不動産市場の長期低迷、消費の停滞、製造業の飽和が影を落とす中、政府は救済政策を連発したものの、効果は限定的だ。2023年の急落から3年目に入った今、経済全体の回復は遅れている。
しかし、暗雲の中に光も見える。電動車両(EV)や人工知能(AI)、ロボット、半導体などの新興産業が輸出主導で成長を支え、「新質生産力」の象徴として評価されている。中国はこれらを「三大新興産業」と位置づけ、補助金やインフラ投資を集中。結果、EV輸出は世界一を維持し、ロボット市場はグローバルシェア40%超を占めるまでに至った。一方で、消費市場は上半期3・8%増と回復基調を示すが、構造的問題が残る。
2025年の中国経済の最大の成果は、製造業、特に自動車分野での輸出急増だ。中国は「世界最大の自動車輸出大国」として地位を固め、伝統的な「世界工場」からハイテク輸出大国へシフトした。中国自動車工業協会(CAAM)のデータによると、2025年1~10月の自動車輸出台数は561万台、前年同期比15・7%増。輸出金額は7984億元(約17兆4500億円)、同14・3%増となった。特に新エネルギー車(NEV、EV・PHEVを含む)の輸出が目覚ましく、累計201万台を突破、同90・4%増。月平均輸出台数は昨年約10万台から今年約20万台へ倍増した。
これに対し、日本自動車工業会(JAMA)のデータでは、2025年1~9月の日本輸出は約306万台。中国の同時期495万台と比べ、1・6倍の差がつく。乗用車限定でも中国420万台に対し日本276万台で、1・5倍。1980年代 年代から40年以上守った日本の「自動車輸出世界一」の座は、2023年に中国に奪われ、2025年は残り2ヶ月で圧倒的リードを確立した。
中国国内販売でもNEVの勢いは止まらず、10月の新車販売台数は171万台、前年比20%増、前月比6・9%増と過去最高。NEVシェアは57・2%に達し、初めて過半数超え。通年NEV販売は1600万台超え、ガソリン車を上回る見込みだ。この成功は、政府の積極支援による。EVは「新質生産力」の柱で、補助金・インフラ投資が功を奏した。
このEVブームは、関連産業の波及効果も大きい。バッテリーや半導体需要が急増し、輸出全体を押し上げた。モルガン・スタンレーの調査では、中国ロボット市場は2024年の470億ドル(約7兆3620億円)から2028年1080億ドル(約16兆9170億円)へ倍増、年平均成長率23%。中国は世界ロボット市場の40%以上を占め、関連企業は74万社超。人型ロボット市場も年平均63%成長、2030年34億ドル(約5306億円)、台数25・2万台の見込み。2025年は人型ロボットの「量産元年」と位置づけられ、ドローン市場も2028年400億ドル(約6兆2660億円)規模へ拡大予測。
AI分野も加速。国務院の『「AI+」行動意見』では、2027年までにAIと6大重点領域の融合を70%超とし、智能経済核心産業を急速成長させる。2025年、ムーア・スレッズのIPOは4000倍超の人気で、AIチップの国産化を象徴。半導体は米中摩擦下でも自給率向上、成熟ノード容量がグローバル需要の4倍速で成長。 これら新興産業は、輸出依存の成長モデルをハイテク化し、2025年のGDP寄与を10%超に押し上げた。
消費市場も基盤を維持。上半期社会消費品小売総額は24兆元(約524兆円)、前年比3・8%増。 11月の消費者物価指数(CPI)は0・7%上昇、ほぼ2年ぶり高水準。 ECプラットフォームの競争は「内巻」を生んだが、全体消費は安定。政府の消費刺激策(買い替え支援策など)が寄与し、NEVシェア拡大が消費構造を変革した。
一方、2025年の中国経済は深刻な構造的課題を抱える。最大の難関は不動産市場の継続低迷だ。2023年の急落から3年、回復兆しは乏しい。国家統計局によると、10月の新築住宅価格(70都市、政府支援除く)は前月比0・45%下落、1年ぶり大幅。中古住宅は0・66%下落、1年1ヶ月最大。上場不動産33社の第3四半期純損失は連続8四半期、累計2293億元(約4兆9850億円)。総資産7・7兆元(約167兆円)、前年比11%減で、2024年の10・4%減を上回る縮小。 深圳など大都市公寓価格は2019年比40~50%下落、半値近く。ブルームバーグは「失われた10年」を警告、オフィス賃料は2026年も下落、2030年建物価値低下見込み。
消費低迷も深刻。CPI上昇も生産者物価(PPI)はデフレ継続。 実店舗閉店潮とEC「内巻」が増収減益を生む。イースト・アジア・フォーラムは、弱い期待が消費を圧迫、貯蓄率高止まりと分析。世界銀行は2025年成長4/5%に鈍化、消費解禁が鍵と提言。
外資動向は懸念材料。スターバックスは中国事業60%を博裕投資に譲渡、バーガーキング中国83%をCPE源峰に売却。 ハーゲンダッツ、コスタコーヒー、ピザハット、デカトロン、IKEAの売却噂も。これは撤退ではなく、再編だが、国産品台頭・競争激化・消費変化を反映。調査で、米企業21%が中国を投資先から除外、パンデ前比倍増。アルバレス・アンド・マーサルは、多国籍企業の「残留か撤退か」から戦略再編へ移行と指摘。
日本企業も苦戦。日系3社(トヨタ・本田・日産)の2024年販売332万台(15・8%減)、シェア11・2%低。2025年も低迷継続、家電輸出は年5万台に縮小。
製造業全体では、EV成功対比で飽和兆候。販売減速、利益率低下、内巻競争が課題。
これらの困難は、従来モデル依存の弊害だ。不動産主導成長の崩壊が消費・投資を連鎖的に弱体化、外資再編が技術移転を阻害する。
2025年の中国経済は、二面性を露呈した。新興産業の輝きが輸出・成長を支え、EV輸出90%増、ロボットシェア40%超、AI普及加速が「新質生産力」を体現。一方、不動産下落、消費期待低迷、外資再編が構造的停滞を招き、回復を遅らせる。
(中国経済新聞)
