12月18日、中国の海南自由貿易港は、全島を対象とする封関運用*1を正式に開始した。これは、中国が高水準の対外開放を揺るぎなく推進し、開放型世界経済の構築を後押しするうえでの象徴的な取り組みと位置づけられる。封関の実施により、海南では何が変わり、どのような政策効果が期待されるのか。

1.「一線」開放、「二線」管理――新たな制度設計(*2)
全島封関後の海南は、税関監督上の「特殊区域」となり、「一線を開放、二線を管理、島内は自由」という基本原則のもと、自由化・利便化政策が本格的に実施される。
「一線」とは、海南と海外との境界を指し、人・資金・物資・データといった要素の越境移動を、より自由かつ円滑にすることを意味する。一方、「二線」は海南と中国本土との境界であり、自貿港の特別政策は海南島内に限定され、島内から本土へ移動する場合には、本土側の関連制度に基づく管理が行われる。重要なのは、封関が「封島」を意味するものではないという点だ。むしろ海南を、世界に向けた制度イノベーションの「実験場」と位置づけ、対外開放の水準を一段と引き上げる試みである。
2.「ゼロ関税」*3拡大と加工付加価値政策の進化
封関運用の開始により、海南自由貿易港は高水準開放の新たな段階へと入る。貿易管理は一層緩和され、これまで中国本土では輸入が制限・禁止されていた一部の貨物も、海南では輸入が可能となる。免税・ゼロ関税政策も大幅に拡充され、免税対象品目は従来の約1,900品目から6,600品目超へと増加。ゼロ関税が適用される品目の割合も、21%から74%へと大きく引き上げられた。
中でも注目されるのが、「加工付加価値30%以上で関税免除」とする政策だ。海南の奨励産業に該当する企業が、輸入原材料を用いて島内で加工し、付加価値が30%を超えた製品を中国本土に販売する場合、輸入関税が免除される。この政策は、企業のコスト削減や製品競争力の向上に寄与するだけでなく、産業チェーンや産業クラスターの形成を促進し、世界の先端製造業を海南に呼び込む効果も期待されている。

2025年11月までに、この政策を通じた島内製品の本土向け販売額は累計114億2,000万元(約2,400億円)に達し、関税減免額は8億7,800万元(約185億円)に上った。封関後は、適用条件の緩和、対象となる輸入部材の拡大、付加価値算定方式の最適化など、さらなる制度の進化が見込まれている。
3.国内連携を牽引するハブ機能
海南自由貿易港の意義は、海南一地域の発展にとどまらない。国内と国際の「双循環」を結ぶ戦略的な結節点として、他地域との連携を通じ、中国全体の対外開放を牽引する役割が期待されている。
近年では、複数の内陸省と海南が連携して産業協力パークを整備し、優良な内地企業が相次いで進出している。これらの企業は、海南自貿港の制度的優位性を活用し、国際市場へと展開するための足掛かりを築いている。こうした「双方向の連携強化」は、国家が海南に寄せる大きな期待を映し出している。
4.医療など民生分野にも広がる恩恵
海南自由貿易港の政策効果は、貿易や投資分野にとどまらず、医療・健康といった民生分野にも着実に及んでいる。博鰲(ボアオ)楽城国際医療観光先行区では、中国国内ではまだ承認されていない国際的な革新的医薬品や医療機器が先行導入され、多くの患者が海外に渡航することなく、最先端の医療を受けられる環境が整いつつある。

全島封関運用の開始により、海南は一層高い開放度と制度革新力を備えた「中国の窓」として、その存在感を強めている。世界と中国本土を結ぶ新たなハブとして、今後の展開が注目される。
注1:「封関運用」は、主に中国の特定の地域(特に海南自由貿易港)において、その地域全体を「域内の税関外」として扱い、ゼロ関税などの大幅な貿易自由化・優遇税制を適用する特別な制度・運営体制を指す税関用語。
注2:「二線管理」体制: 地域外(海外)との間は「一線」と呼ばれ開放され(原則ゼロ関税)、中国本土とは「二線」として区別され、本土への貨物の移動は「輸出入」とみなして税関が管理します。
注3:関税の優遇: 指定された区域内では、特定の貨物の輸入関税が免除(ゼロ関税)されるなど、通常の中国国内とは異なる優遇措置が適用されます。
(中国経済新聞)
