AIデータセンター特需で燃気タービン需要が世界的に急拡大 受注はすでに3年先、中国企業も存在感

2025/11/21 09:45

世界の燃気タービン市場が、かつてない活況を迎えている。GE Vernova(通用電気のエネルギー部門)、シーメンス・エナジー、三菱重工など主要メーカーはいずれも受注が急伸し、供給能力が逼迫する状況にある。

シーメンス・エナジーは2025年度、未納入の受注残が1380億ユーロと過去最高を更新した。上半期の燃気タービン新規受注の約6割はデータセンター向けである。GE Vernovaは昨年、燃気タービンの新規受注が20.2GWと前年比112.6%増を記録し、受注残はすでに2028年分まで積み上がった。三菱重工も今後2年間で燃機の生産能力を倍増させる計画だ。

■ AIデータセンター需要が北米の電力不足を顕在化

需要拡大の最大要因は、北米で深刻化する電力供給の逼迫である。とりわけAI(人工知能)データセンターの電力消費が急増しており、米国エネルギー省によれば、2023年のデータセンター消費電力量は176TWh(米国全体の4.4%)に達した。2028年には325~580TWhへと急拡大し、全電力需要の6.7~12%を占めると予測されている。

企業側の投資姿勢もこの動きを裏付ける。ブルームバーグの予測では、北米主要4社のクラウド事業者による2025年の総資本支出(リースを含む)は3620億ドルに達し、前年比58.5%増とされる。2026年も30%前後の高成長が続く見通しだ。

■ 老朽化した電力網と退役電源、建設に時間のかかる代替電源

一方、供給側では老朽化した送電網がボトルネックとなり、老旧の石炭火力・ガス火力の退役が進んでいる。新たなガス火力の建設には一般的に3年以上、原子力発電に至っては5~10年もの時間を要する。このため、電力需給のひっ迫は短期的に解消が難しい。

中金国際は、今後5年間、米国の年間電力需要増加が30GWを超え、そのうち約20GWがデータセンターによるものと試算。年平均15GW程度の供給不足が発生し、電力不足は長期化する可能性が高いと指摘する。

こうした状況下、発電量の約4割を占めるガス火力は最も現実的な電源とされる。中金公司は、「燃気タービン発電は効率が高く、起動停止が速く、建設期間が短い。コストも抑えられ、排出量も比較的低いことから、北米のデータセンター電源として短期的に最適解になり得る」と分析する。

米国ではこの数年で燃気発電所の建設コストが約50%上昇しており、BNEF(ブルームバーグNEF)は2026~2031年に米国内で16.8GWの新規ガス火力が稼働する可能性があると予測している。

■ 高まる需要が中国企業に波及、関連銘柄はA株市場で急騰

世界的な高景気は中国の資本市場にも波及している。A株市場では燃気タービン関連銘柄が急騰し、三角防務(300775.SZ)は一時20%高の制限値に到達、应流股份(603308.SH)は年初来150%超の上昇を記録した。潍柴动力(000338.SZ)、联德股份(605060.SH)、万泽股份(000534.SZ)なども相次いでストップ高となった。

背景には、中国企業と欧米大手メーカーとの緊密な協業がある。

応流股份:シーメンス・エナジーのH級タービン向けブレードを中国で独占供給。
万澤股份:シーメンス・エナジーと3年間の燃機供給契約を締結。
航宇科技(688239.SH):GE Vernova向けに圧縮機・燃焼室・タービン部品など多数の新製品を導入し、鍛造品の一括納入も実施。
三角防務:シーメンス・エナジーと燃機開発および枠組み契約を締結。

特に、熱端部の動翼や主軸など高付加価値部品は高い技術力が求められ、生産設備の増強にも時間を要する。このため、国際サプライチェーンに中国企業がより深く参入するチャンスになっていると業界では見られている。

■ 技術潮流は「掺氢(混焼)」へ、CO₂削減とコスト安定化で存在感

技術動向として注目されるのが、水素を混ぜて燃焼させる「掺氢(混焼)」である。米国メーカーの技術担当者は、「脱炭素の要請が強まる中、天然ガスと水素の混焼はCO₂削減に加え、ガス価格の変動リスクを抑える効果もある」と説明する。

同社のガス‐水素混焼タービンを備えた発電所はすでに中国で稼働しており、中国の大手電力企業とも協力を広げているという。

(中国経済新聞)