インドネシア、中国製「殲-10」戦闘機の購入を正式決定

2025/10/17 11:30

インドネシア国防省は、現地時間10月15日、シャフリ・シャムスディン国防相が中国製の成都「殲-10C」戦闘機の購入を正式に確認した。少なくとも42機の調達を予定しており、これはインドネシアにとって初の非西側諸国からの戦闘機購入契約となる。シャフリ相は、具体的な納入スケジュールや追加詳細については明らかにしなかったが、「まもなくジャカルタ上空を飛ぶだろう」とのコメントで、早期実現への期待を示した。この決定は、6月にインドネシア軍が同機種の検討を公表して以来の進展であり、中国との防衛協力強化の象徴として注目を集めている。

インドネシアは近年、軍事近代化を加速させており、老朽化した航空戦力を更新する動きが活発化している。2022年にはフランスから42機の「ラファール」戦闘機を81億ドルで発注し、2026年に初回分が納入予定だ。今年に入っては、トルコ製の「カン」戦闘機48機の契約を締結。また、韓国との共同開発による「KF-21」戦闘機プロジェクトも進行中で、2026年頃の初飛行を目指している。これらの調達に加え、殲-10Cの導入は、多国籍的な供給源の多様化を意味する。国防省報道官のフレガ・ウェナス准将は、先月、殲-10Cの性能評価を進めていると明かしており、中国の提案が価格の安さと先進性で優位だったことが決定の背景にある。

殲-10C、通称「ビガラス・ドラゴン」は、中国人民解放軍空軍が主力とする第4世代戦闘機で、デルタ翼とカナード翼を組み合わせた機体が特徴。最大探知距離200kmの火器管制レーダーを搭載し、11箇所の外部ハードポイントでミサイルや任務ポッドを運用可能だ。開発から約40年経過するが、元副チーフデザイナーの謝平氏は「今なお現代的で美しい」と評するように、信頼性が高い。パキスタンが運用する同機種は、今年5月のインド・パキスタン紛争でインド機を複数撃墜したと報じられ、戦闘実績が輸出プロモーションに寄与している。中国空軍の現役中隊から直接引き渡される可能性が高く、製造遅延を最小限に抑えられる点も魅力だ。

この購入の裏側には、地政学的要因が色濃く影を落としている。インドネシアは1月のBRICS加盟以来、中国との戦略的関係を深めており、プラボウォ・スビアント大統領は就任直後に北京を訪問。中国首相の李強氏が5月にジャカルタを訪れた際には、「中国・インドネシア運命共同体」の構築を強調した。一方、米国製F-15EX戦闘機の調達交渉は進展が遅れており、中国製の選択はこうしたバランス外交の産物と言える。インドネシアは依然としてフランスとの協力も維持し、5月のマクロン大統領訪印でラファール追加発注の意向書に署名。スウェーデン製早期警戒機との連携も想定され、多様な装備体系の構築を進めている。

国防相の発表後、インドネシア財務省のパルバヤ・ユディ・サデワ財務相も、約90億ドルの予算承認を公表したが、納入時期の再確認を強調した。空軍トップのM.トニー・ハルジョノ空軍参謀総長は、「すべての調達は政府決定に基づく」とし、独自判断ではないことを明言。9月のプラボウォ大統領の中国訪問で、防衛協力と42機の購入が議題に上ったことが、今回の決定を後押ししたようだ。

インドネシアの軍事近代化は、南シナ海やインド洋の戦略的要衝を巡る緊張を背景に、急速に進む。殲-10Cの導入は、中国の軍事輸出拡大を象徴し、東南アジアの防衛市場に新たな風を吹き込むだろう。6月11日から14日まで開催予定の「インド国防博覧会」で正式発表される可能性もあり、今後の詳細が注目される。中国の「一帯一路」イニシアチブとの連動も懸念され、米国や欧州諸国からの反応がどう出るか。インドネシアの空が、多極化する国際情勢を映す鏡となるかもしれない。

(中国経済新聞)