トランプ政権の主要閣僚たちが相次いで、米国が台湾産の先端半導体チップへの依存度を大幅に下げる方針を表明した。米国商務長官ハワード・ルットニックは、米国の先端チップ需要の50%を国内で生産することを目標に掲げている。一方、財務長官ベセント(Besent)は、米国が必要とする先端チップの30%から50%を米国本土または日本や中東などの同盟国から供給すべきだと主張している。この背景には、米国が地政学的リスクやサプライチェーンの脆弱性を軽減し、半導体産業における自給自足を強化する戦略がある。
ルットニック商務長官は、9月27日に米国の保守系メディアNewsNationのインタビューで、米国が台湾当局と、米国が台湾のチップ供給に過度に依存している問題の解決策について協議を行ったことを明らかにした。彼は次のように述べた。「台湾にとって、この問題に同意することは容易ではない。台湾は世界の最先端チップ供給の95%を占めている。95%の市場シェアを持つ側に、シェアを50%に下げるよう説得するには、相当な話し合いが必要だ」と語った。
ルットニック長官は、トランプ政権が台湾との交渉で、米国が台湾に「安全保障」を提供する代わりに、台湾が米国の先端チップの「合理的な自給」を支援する必要があると伝えたと説明した。彼は2025年1月の就任時、米国産の先端チップが国内需要のわずか2%しか満たしていなかったと指摘。自身の任期が終わる4年後には、この割合を40%または50%に引き上げることを目標にしている。
ルットニック長官は、米国が先端チップ需要の50%を自給するためには、約5000億ドルの投資が必要であり、完全なサプライチェーンの構築が求められると試算している。この巨額な投資は、米国の半導体産業の再構築を目指すトランプ政権の「チップ回帰」戦略の一環である。例えば、台湾の半導体大手・台積電(TSMC)は、2025年3月にアリゾナ州で1000億ドル以上の追加投資を発表し、3つの晶円工場と2つの先進パッケージング施設、さらには研究開発センターを新設する計画を明らかにした。これにより、台積電の米国での総投資額は1650億ドルに達する。
しかし、米国が台湾のチップ産業への依存を減らすことで、台湾の半導体産業の重要性が低下した場合、米国が台湾に対する「約束」(安全保障協力など)に影響が出るのではないかとの質問に対し、ルットニックは次のように答えた。「たとえ台湾が米国が必要とする先端チップの50%しか供給しなくなったとしても、米国は依然として台湾に根本的に依存しており、残りの半分がなければ機能しない」と述べた。ただし、彼は続けて、「もし米国が50%の先端チップを自給できるようになれば、必要に応じて米国は『やらなければならないこと』を実行する能力を持つ」とも発言。具体的に何を指すかは明言しなかったが、戦略的柔軟性の確保を暗に示唆した。
台湾は世界最大の半導体製造企業である台積電を擁し、NVIDIA、Apple、Qualcommなどの米国の主要テクノロジー企業にとって不可欠なパートナーである。台積電はすでに米国で650億ドル以上の投資を進めており、2025年初頭からアリゾナ州の第1工場で4ナノメートルチップの量産を開始している。しかし、台積電の最先端技術の90%以上は依然として台湾で生産されており、米国での生産拡大には高コストや人材不足、効率的なサプライチェーンの構築といった課題が伴う。
米国商務長官ルットニックの声明は、米国が先端半導体産業における台湾への依存を減らし、国内生産能力を強化する決意を示している。5000億ドル規模の投資計画と台積電の米国進出拡大は、この戦略の具体化を象徴するが、コストや技術移転の課題は依然として大きい。台湾側は、米国の安全保障上の「約束」と引き換えに、チップ生産の一部を米国や同盟国に移す圧力に直面している。地政学的緊張が高まる中、米国のチップ自給戦略は、台湾との関係だけでなく、グローバルな半導体サプライチェーンの再編にも大きな影響を与える。
(中国経済新聞)