EU、中国から輸入のEVへ追加関税を決定 中国はどう対応するか

2024/10/8 07:30

EUは10月4日、中国から輸入されるEV=電気自動車への関税を上乗せすると決定した。

EUでは乗用車に対する関税率が10%であり、中国製のEVはこれに7.8%~35.3%が上乗せされる。メーカー別に見ると、テスラの車は7.8%加算して計17.8%、BYDは 17%加算して計27%、上汽集団は35.3%加算して計45.3%となる。

この数字は2023年の輸出実績にほぼ比例し、輸出が多い会社ほど上乗せ分が高くなっている。中国製EVは産業チェーンがしっかりしているので圧倒的なコストメリットがあり、EUは危機感を抱いていた。

しかし今回の追加関税で、中国製EVは競争力が大きくダウンしてしまう。これこそEUの狙いである。あからさまな保護貿易政策を前に、中国はどのように対応していくか。

中国はEUが追加関税を検討していた去年から交渉を進めていた。6月12日、EUの執行機関であるヨーロッパ委員会は、中国から輸入するバッテリーEVに対し、メーカー別にBYDは17.4%、吉利は20%、上汽集団は38.1%の暫定追加関税を課すと発表している。

上汽集団の名爵

今回決定された税率はこの暫定率を下回るものとなった。交渉で追加関税を阻止できなかったものの、税率はある程度抑えられた。

交渉は今後も必要な選択肢の一つとなる。

中国メディア「正解局」によると、EU委員会は、「引き続き中国とともにWTO=世界貿易機関の規定を満たし、調査で確定した補助金問題を十分に解決しうるものであり、監視や実行が可能な代替的解決策の模索に努めなければならない」と表明している。すなわちEUは、交渉に応じる姿勢が十分であることが分かる。

EUは、追加関税の議案を否決するには15か国以上が反対し、それらの国々の人口が少なくともEU全体の65%に達する必要があった。ただし賛成票が特定多数の支持を得られなくても反対票がボーダーライン以下であれば、議案は実行される。

このようにハードルが高いので、投票に持ち込まれたら否決はまずありえない。

投票前はドイツが真っ先に強く反対していたが、焼け石に水だった。ただし投票結果は、次のようにかなり混とんとしていた。

賛成:フランス、イタリア、オランダ、ポーランド、デンマーク、アイルランド、ブルガリア、エストニア、リトアニア、ラトビアの10か国。(EU域内における人口割合は45.99%)

棄権:ベルギー、チェコ共和国、ギリシャ、スペイン、クロアチア、キプロス、ルクセンブルク、オーストリア、ポルトガル、ルーマニア、スウェーデン、フィンランドの12か国。(同31.36%)

反対:ドイツ、ハンガリー、マルタ、スロベニア、スロバキアの5か国。(同22.65%)

こうした結果から、賛成派は国の数も人口比も50%に満たず、意見が分かれていることが分かる。EUも決して一枚岩ではなく、中国はまだ交渉の余地が残されている。中国メーカーは間違いなく生産の現地化を加速していくだろう。

中国メーカーは今回の決定を受け、必然的に運営を現地化するようになり、結果的にEVの産業チェーン整備につながっていく。大手メーカーであれば、東ヨーロッパで組み立てをしてもEUの主力メーカーよりコストが25%抑えられるとのデータもある。

もはや避けられない産業の「戦争」が始まっている。

(中国経済新聞)