中国で多国籍企業が地域本部を上海に設ける理由とは

2023/02/24 21:15

国際的な大都市である上海には今、外国企業が6万社以上あり、多国籍企業の地域本部891か所、外国企業の研究所531か所が集結し、生命力や活力をもたらしている。

多国籍企業が続々と上海に本部を構え、何十年も根付いている理由とは何だろうか。

ハイテク製造業、ヘルスケア、消費財関連の大手であるAT&S、ポルシェ、レゴランド、ユニリーバ、メドトロニック、ジョンソン、ロレアルの7社、その他世界大手500社の社長の視点から、上海にどのような魅力があるかを探ってみた。

限りないマーケット潜在力

各社の経営者の口から、「マーケット」という言葉がしばしば発せられた。

「中国市場はヘルスケアを中心に確実に最大のマーケットとなる」。大手医療機器メーカー・メドトロニックのグローバルシニア副総裁兼中華圏総裁の顧宇韶(アレックス・グー)氏はこのように見ている。人口の多い中国で、コロナを経た上で健康に対する期待感が高まり、需要も常に伸びていることから、投資の拡大にさらなる期待ができるとしている。

メドトロニックは1996年に上海に立地してから中国事業を拡大しており、現在の社員数は6000人を超え、事業所を14か所構え、消化器系統、手術・重症対応、神経科学、糖尿病を事業対象としている。世界第2位の医療機器マーケットとなった中国で、メドトロニックは参入し、成長を見つめ、利益を得ている。

また、化粧品のロレアルグループは、中国で25年にわたり安定的に質の高い成長を遂げ、同じく中国が世界で2番目のマーケットとなった。北東アジア地域総裁で中国CEOであるFabory氏によると、この1年間は新型コロナウイルスの影響を受けた中、世界5地域いずれも二桁成長を遂げ、中でも中国はかなりの結果を出したという。

Fabory氏は、「中国事業は期待十分であり、新しい時代が訪れている。上海は確実に国際的な消費の中心都市となって、持続性や革新性、包容性が一段と備わる」と述べている。

人材の集結地

ユニリーバは2007年、北東アジア地区本部を上海に設けた。

そして2009年、1億ドル以上をかけて、世界6か所目となる研究センターを上海の虹橋臨空開発区に建設した。面積およそ3万平方メートルに及ぶものである。

「人材があることを踏まえて上海にグローバル研究センターを据えた。上海は常に、イノベーション型を中心にエリートが集まりゆく場所である」。ユニリーバ大中華圏の曽錫文副総裁はこう話す。上海の研究センターには世界12か国から400人近い開発者が集まり、そのほとんどは博士課程修了者で、半数以上が留学や海外勤務を経験している。2018年には所内にアカデミー(専門家)ステーションを設け、13人を迎え入れた。

オーストリアから中国に進出した企業の中で最大手であるAT&Sは、人材の現地化に向けて育成に取り組んでいる。中国地区取締役会の潘正鏘会長によると、2014年から上海開放大学の教員を招き、会社が授業料を全額負担する形で一般社員向けに短大や大学の講義を実施している。スキルが見込める社員に対しては、イノベーション型の現地化人材養成に向けて修士や博士課程まで学費を援助するほか、他部門へのローテーションや海外派遣も行う。

ビジネス環境の改善

春節(旧正月)が明けて最初の出勤日となった1月28日、上海で、この時期6年連続となる世界的なビジネス環境の整備に向けての新たな取り組みが発表された。

6年間で6度にわたるビジネス環境の改善について、現地の多国籍企業は十分に実感している。

ジョンソンのグローバルシニア副総裁で中国地区会長の宋為群氏は、「上海でのこれまでの歩みで、ビジネス環境が常に改善していると感じており、また地元政府なども、会社の事業をわがごとと見て焦りや考えを同じように感じている、と実感するようになった」と述べている。

上海は今年も、およそ240億ドルをかけて多国籍企業の地域本部を新たに60か所、外資系企業の研究所25か所を設けるという「小さな目標」を打ち立てている。

(中国経済新聞)