2016年11月3日の深夜、中国人女子留学生の江歌(Jiang Ge)さんが東京都中野区の自宅で殺される事件が発生した。元交際相手の陳世峰(Chen Shifeng)容疑者との間にトラブルを起こした同じ中国人女子留学生の劉暖曦(Liu Nuanxi)(旧名「劉鑫」(Liu Xin))さんが、救いを求めて友人の江歌さんの自宅に行き、江歌さんが劉さんを家に入れたところ、陳容疑者が現れた。ところが劉さんは外に出た江歌さんを家の中に入れず、江歌さんはその場で殺害された。この事件について中国の裁判所は、劉さんの行為が不条理であったとして69.6万元(約1316万円)の支払いを命じる判決を下したが、劉さんはこれを不服として控訴した。しかし2022年12月30日、山東省青島の中級裁判所で行われた控訴審でも一審の判決が支持された。江歌さんの母である江秋蓮さんは、裁判所の審議結果をメールで受信した際に、娘にも見せようとの墓前に駆け付けたのである。
青島の裁判所はこの事件について、危険性を招き、かつ救われた劉さんは、助けてくれた江歌さんに対する気遣いや救助、安全を確保するという義務を果たさず、江歌さんの殺害について過失があり、江歌さんの死亡と法的な因果関係が存在し損害賠償責任を負うべきであると見なした。よって劉さんに対し、一審の判決における江秋蓮さんの損失額49.6万元(約938万円)、精神的苦痛への慰謝料20万元(約378万円)および訴訟費用のほか、二審の訴訟費用1.076万元(約20万円)を支払うよう命じた。
江秋蓮さんは2022年12月31日、一審の審議中に表明していた賠償金を寄付するという意思に変わりはないと述べ、劉さんが判決結果を実行したのちに、娘の江歌さんの代わりに手に入れた賠償金額をすべて公益団体や関係先に渡す予定と話した。のちの取材では、学校に通えない女子児童を支援したいと述べている。
一方で劉さんは1月2日夜、ブログの本人署名文で二審判決についてコメントし、この中で賠償金額の70万元(約1324円)について、「このような結果が出た以上、払うしかない。支援してくれる人がいれば深く感謝し、一つ一つ覚えて機会があれば恩返ししたい」と発表した。「劉暖曦」との署名がついたこのコメントは投げ銭を募集しており、これまでに数百人が送金している。
これについて江秋蓮さんは1月3日、個人のブログで「劉は度重なる違反でコメントを禁止されながら、またも新しいアカウントを作って金集めをしている」と述べ、ブログの管理者に対して劉鑫さんのアカウントを閉鎖するよう求めた。これに対して劉さんは3日午後、「もらったお金は使い道を公表する」と回答し、その上で「お金を稼いだらそれぞれ全部返す」ともコメントしている。
(中国経済新聞)