中国アートトイ業界のトップ企業として知られる玩具メーカー「ポップマート」が転落の道へ

2022/10/13 11:55

日本国内でも販売店舗を展開する中国のおもちゃメーカー「ポップマート」(POP MART)。本国中国の今年上半期、コロナの影響で店舗の売上が急減し、利益が初めて前年割れするなど、業績は上場以来最低となった。

2022年上半期の決算を見ると、売上高は前年比33.1%増の23.59億元(481億円)、利益は同7.2%減の3.32億元(67.7億円)であった。

ポップマートは2017年から2019年にかけて、売上高を1.58億元から16.83億元に伸ばし、利益が300倍近く増えた。2019年末には、粗利率が64.8%で在庫回転日数はわずか46日間であった。盲盒(ブラインドボックス)の「購入中毒」や中古品のプレミアム化により商売がウハウハ状態となり、さながら「フル稼働するアートトイ製造マシン」のようになった。

支持者からすれば、ポップマートへの投資は若者たちの消費のトレンドや莫大なアートトイ市場の最大手への投資であったが、冷めた見方として「ポップマートが依存する『盲盒』モデルは敷居が低くて真似されやすく、法的リスクを伴う」とし、「『人形の転売』は単に『靴の転売』のパクリでせいぜい3~5年しか持たない」との指摘もあった。

こうした様々な論議の中で香港での上場を果たしたポップマートは、初日に株価が100%以上値上がりして77.1香港ドル(1435円)に達し、時価は1000億(1.86兆円)の大台を突破して、店頭市場からの撤退時における20億香港ドル(408億円)の45倍となった。

しかしこの賑わいもつかの間で、融資は2021年後半から数量も金額も落ち込み、流通市場での世界的な資金の投入で消費銘柄の好況が止まって、バブルが潰えた。株価は現在、すでに17.96香港ドル(334香港ドル)まで下がっており、時価総額は最高時から80%近く下落してしまった。

華興資本(China Renaissance)のCEOである包凡(Bao Fan)氏は以前、「ポップマートの商品は人間の『モノ集め』という本質を突いたもので、新世代の『安らぎ』というニーズを発散させるものだ」と述べていた。ギャンブル性のある「盲盒」がこうした行動を拡大させ、アートトイを新世代のコレクションの対象にしたのである。

消費の環境に先行きが見当たらない現在、心のニーズはサバイバル品に代わり、庶民の消費行動も慎重になって、ギャンブル性による快感も失われつつある。

(中国経済新聞)