中国の車載電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)は、2026年1~9月期の売上高が4421億3700万元(約9兆8000億円)、親会社株主に帰属する純利益が645億3000万元(約1兆4300億円)になったと発表した。売上高は前年同期比56.19%増、純利益は31.60%増となった。
同社は、電気自動車向け電池市場での主導的な地位を一段と強化している。その成長を支えているのが、複数の電池技術の並行開発、超急速充電と電池交換の両立、海外事業の現地化、そして自動車以外の分野への事業拡大という4つの戦略だ。(※円換算は概算。実際の金額は為替相場によって変動する。)
1.複数の電池技術を並行開発、安全性と量産力を強化
中国のスマートコネクテッド新エネルギー車産業に関する「第15次五カ年計画(2026~2030年)」では、技術革新能力の向上が重点課題の筆頭に位置付けられている。重要技術の開発に加え、産業全体の供給網の強化と安全性の確保が求められるなか、CATLは特定の技術に依存せず、複数の電池材料・化学方式を並行して開発する戦略を進めている。
2026年4月、北京で開催した「先端技術発表会」では、第3世代「神行」超急速充電電池、第3世代「麒麟」電池、「麒麟」凝集態電池、第2世代「驍遥」高性能ハイブリッド車用電池、「鈉新」ナトリウムイオン電池を発表した。
リン酸鉄リチウム電池、三元系リチウムイオン電池、凝集態電池、ナトリウムイオン電池など、多様な技術をそろえることで、乗用車から商用車まで幅広い需要への対応を目指す。
同社が重視するのは、研究室で高性能な電池を開発することだけではない。安全性と品質を維持しながら、膨大な数量を安定して生産する能力だ。
同社の製造部門責任者、倪軍氏は、優れた電池を1個開発することよりも、品質のばらつきを抑えながら10億個単位で量産することこそが本質的な課題だと指摘する。
CATLの21世紀イノベーション研究所では、自社開発の高性能計算設備、原子レベルの構造観察を可能にする高性能電子顕微鏡、約3000万台の車両から得られた10年以上の稼働データを基にした材料データベースなどを活用。従来の粒子単位から原子単位へと品質管理を高度化している。
こうした研究成果は、中国・江蘇省溧陽市の製造拠点にも反映されている。同拠点は世界経済フォーラムから「灯台工場」に認定された工場の一つで、設計から製造、検査、設備保全まで一貫した品質管理体制を構築している。
CATLの累計研究開発投資額は過去10年間で1000億元(約2兆2000億円)を超え、2025年単年では200億元(約4400億円)を超えた。保有特許は6万件以上に上るという。同社は電池の故障率を10億分の1に抑えているとしており、研究開発と量産技術の両面から安全性の向上を追求している。
2.超急速充電と電池交換を両立、充電待ちの課題を解消
電池性能と品質の向上に加え、電気自動車の普及を左右するのが充電・エネルギー補給の利便性だ。CATLは超急速充電と電池交換を並行して拡大し、利用環境に応じた選択肢を整備している。
第3世代「神行」超急速充電電池は、充電量10%から80%まで4分未満、98%まで6分27秒で充電できるとしている。マイナス30度の環境でも、充電量20%から98%まで約9分で充電可能だという。
同社は、発熱の抑制、放熱性能の向上、制御精度の改善を組み合わせることで、急速充電時の電池への負荷を低減。1000回の完全充放電後も容量維持率90%以上を確保できるとしている。
一方、電池交換サービスでは、乗用車向けの「巧克力(チョコレート)交換」と、大型トラック向けの「驥驍(きぎょう)交換」の2本柱でネットワークを拡大している。
乗用車向け交換施設は累計2500カ所を超え、中国国内の31の省級地域、200以上の都市をカバー。対応車種は30車種以上に達し、急速充電と電池交換の両方に対応する施設の展開も進めている。
同社は2027年までに、中国国内の主要幹線道路20路線を対象に、高速道路向け交換施設1000カ所を整備する計画だ。南北方向の11路線と東西方向の9路線からなる全国網を構築し、平均約100キロメートルごとに交換施設を配置することを目指す。
大型トラック向けでは、2026年末までに900カ所、2027年までに2000カ所の交換施設を整備し、高速道路の主要幹線網をカバーする計画だ。資料によると、電動大型トラックの普及率は50%を超え、CATLの電池を搭載した電動大型トラックは43万台以上に達し、業界全体の約70%を占めるという。
超急速充電と電池交換の双方を拡充することで、長距離移動への不安を軽減するとともに、商用車の電動化や物流分野の脱炭素化にも貢献する構えだ。

3.欧州で現地生産を拡大、輸出型から現地密着型へ
CATLの海外戦略も新たな段階に入った。2026年9月には、ハンガリー東部デブレツェンの電池工場が生産を開始した。
同工場の総投資額は約73億4000万ユーロ(約1兆3000億円)、計画生産能力は年間100ギガワット時。中国企業による海外の車載電池製造事業として、最大級の投資案件となる。
立地選定の背景には、欧州自動車メーカーとの連携がある。BMWグループが次世代電気自動車「ノイエ・クラッセ」の生産拠点を同地域に置いており、CATLは同車種の主要電池供給企業となっている。メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンなども、ハンガリーおよび周辺地域で電気自動車の生産体制を整えている。
自動車メーカーと電池工場を近接させることで、物流費の抑制や供給網の安定化を図る。「顧客のいる場所で生産する」という方針が、現地の産業構造に組み込まれる形で進んでいる。
デブレツェン工場では、まず電池モジュールの生産を先行させ、その後に電池の基本単位である電芯の製造へ移行する段階的な方式を採用した。2024年秋にはモジュール生産を開始し、累計53万7000セットを生産。電芯の量産に向けて、現地での製造経験を積み重ねてきた。
工場では約9000人の雇用を計画しており、すでに地元企業300社以上と協力関係を築いている。
欧州での事業基盤はハンガリーだけではない。ドイツのテューリンゲン工場は2025年に黒字化し、ドイツ、ハンガリー、スペインの3拠点が欧州の主要な生産網を形成している。
資料によると、2026年1~7月のCATLの海外向け車載電池搭載量は107.5ギガワット時で、前年同期比43.7%増。海外市場シェアは34.0%に上昇し、初めて3分の1を超えた。
こうした動きは、中国の電池産業が完成品の輸出を中心とするモデルから、現地生産、雇用創出、地域企業との協業を通じて海外の産業基盤に組み込まれるモデルへと転換しつつあることを示している。
4.自動車から蓄電・航空・船舶・人工知能関連施設へ
CATLの成長戦略は、自動車向け電池の拡販にとどまらない。2025年の世界動力電池大会で、曾毓群董事長は「全領域での需要拡大」戦略を打ち出した。電池の用途を自動車から航空機、船舶、蓄電システムなどへ広げ、新たな需要を開拓する構想だ。
2026年1~9月期の車載電池と蓄電池の合計販売量は260ギガワット時を超えた。うち蓄電池の比率は約4分の1で、販売量は前年同期比で約60%増加したという。
再生可能エネルギーの導入拡大に加え、人工知能の普及に伴うデータセンターの電力需要増加も、蓄電事業の成長機会となっている。
CATLは複数の技術企業と協力し、人工知能向けデータセンターに適した高効率の電力供給・蓄電システムの普及を進めている。大量の電力を安定して供給する必要がある人工知能関連施設に対し、蓄電技術を活用した新たな事業展開を狙う。
航空分野では、グループ企業の峰飛航空向けに開発した貨物輸送用電池が、中国民用航空局の製造適合性審査を通過した。また、航空産業向け品質管理規格「AS9100D」の認証も取得。最大離陸重量5トン級の電動垂直離着陸機も初の公開飛行を実施した。
船舶分野では、中国、米国、ノルウェー、フランスなどの主要船級協会から船舶用電池システムの型式認証を取得し、電動船舶への搭載実績は累計約1000隻に達している。
さらに、船舶、陸上設備、クラウドを連携させる「船・陸上設備・情報管理システム」型の脱炭素海運構想を展開。電池を単なる動力源としてではなく、水上交通システム全体を支えるエネルギー基盤へと発展させようとしている。
電池の需要先が自動車だけでなく、航空、船舶、データセンターへと広がれば、市場の成長を左右する要因も変化する。CATLにとって、全領域での需要拡大は、既存技術を異なる産業へ展開し、成長機会を広げるための戦略と位置付けられる。
4つの戦略を連動させ、電池産業の成長を主導
CATLの2026年1~9月期の業績拡大は、単に電気自動車市場の成長を取り込んだ結果ではない。複数の電池技術を並行して開発し、量産品質を磨き、充電・交換施設を整え、海外で生産体制を築き、さらに自動車以外の需要を開拓するという複合的な戦略が背景にある。
技術革新は競争力の源泉となり、充電・交換施設は利用者の利便性を高める。海外現地生産は顧客との結び付きを強め、新分野への展開は新たな市場を切り開く。
これらの取り組みは、中国が掲げるスマートコネクテッド新エネルギー車産業の「第15次五カ年計画」の方向性とも重なる。CATLは企業としての成長を追求する一方、電池技術、エネルギーインフラ、国際的な産業協力を通じて、電気自動車産業全体の発展を支える役割も担っている。
今後の焦点は、技術革新を実際の量産・販売へ結び付ける力を維持できるか、欧州など海外市場で現地生産を安定稼働させられるか、そして蓄電・航空・船舶・人工知能関連施設といった新分野で継続的な収益源を確立できるかにある。
世界の電動化と電力需要の拡大が同時に進むなか、CATLの競争力は、電池単体の性能だけでなく、技術、製造、充電・交換網、海外展開、用途開拓を一体化する総合力によって左右されることになりそうだ。
(中国経済新聞
