Apple初の折りたたみiPhoneを支える中国の精密製造技術 「折り目のない画面」への挑戦

2026/10/14 12:00

Apple初の折りたたみスマートフォン「iPhone Duo」の開発・製造を支える中国のサプライチェーン企業が、高度な精密加工技術や自動化技術を駆使し、製造上の難題に挑んでいる。ディスプレーの折り目を目立たなくするマイクロメートル単位の加工技術から、SoC(システム・オン・チップ)の薄型化を実現する成膜技術、製品パッケージの高速組み立てまで、その技術力は幅広い分野に及ぶ。

Appleの最高執行責任者(COO)、サビーフ・カーン(Sabih Khan)氏はこのほど、中国紙『経済参考報』の取材に応じ、折りたたみスマートフォンの製造における技術的な課題について、次のように語った。

「折りたたみスマートフォンで平坦に仕上げるのが最も難しい部分は、往々にして肉眼では見えないところにある。ヒンジ部分は100点以上の精密部品で構成されている。サプライチェーンの異なる工程で製造された部品同士の平坦性を確保し、ユーザーが使用する際に折り目をできる限り感じさせないようにするため、中国のパートナー企業とともに多くの技術的課題に取り組んできた」

取材中、カーン氏は自らのiPhone Duoを取り出し、端末を開閉しながら、その滑らかな動作と画面の平坦性を披露した。

マイクロメートル単位の精密加工で、折り目の目立たない画面を実現

画面を平坦に仕上げる技術の鍵を握るのが、Appleと、河南省鄭州市にあるフォックスコン(富士康)の中国工場が共同開発した、iPhone Duo専用のマイクロメートル級3Dプリント自動化生産設備だ。両社は共同で技術開発を進め、折りたたみディスプレーの表面を極めて高い精度で平坦に仕上げる工程を量産に適用するという課題を克服した。技術者によると、iPhone Duoの製造における難題の一つは、折りたたみ部分の平坦性をいかに確保し、画面に生じる折り目をいかに軽減するかという点にある。

この課題に対応するため、両社は100点以上の精密部品で構成されるヒンジ周辺の構造と製造工程を再設計し、専用部品を独自に開発・製造した。

生産設備には、共焦点レーザーによる計測技術を採用。各端末の微細な表面形状を層ごとにスキャンし、そのデータを機械学習アルゴリズムで解析することで、表面の凹凸を補正するための充填方法をリアルタイムで算出する仕組みを構築した。

肉眼では判別できないほどわずかな凹凸も、後にディスプレーの折り目が目立つ原因となり得る。そのため、表面の微細な高低差を正確に把握し、補正することが重要となる。

具体的には、専用に開発した光硬化性ポリマーを最大25層にわたって精密に噴射し、一層ずつ積み重ねていく。こうして表面の微小な凹凸を一点ずつ再形成し、細かく補正することで、ディスプレーを支える平坦な基盤を形成する。

こうした精密加工技術を量産工程に組み込むことで、折り目をできる限り目立たなくする画面構造を実現している。カーン氏は、iPhone Duoについて「Appleがこれまで手掛けてきた製品の中でも、特に開発難度の高い製品の一つだ」と述べた。

SoCへの直接スパッタリングで薄型化と放熱性能の向上を両立

折りたたみディスプレーの加工技術に加え、SoCへの直接スパッタリング技術と、その前処理工程も注目される。フォックスコン鄭州工場の責任者によると、同社は半導体製造技術をスマートフォン本体の組み立て工程に導入する取り組みを進めている。

具体的には、電磁ノイズを遮蔽するためのスパッタリング技術をSoCのパッケージ表面に直接適用する。従来使用していた金属製シールドカバーを不要にすることで、モジュールの厚みを大幅に抑えるとともに、放熱性能の向上を図っている。

スパッタリングとは、材料にエネルギーを与えて原子などを放出させ、対象物の表面に薄膜を形成する成膜技術だ。SoCのパッケージ表面に電磁シールド層を直接形成することで、別部品としてシールドカバーを取り付ける従来方式に比べ、省スペース化が可能になる。

一方、この技術をSoCのパッケージ構造に適合させるには、成膜前の表面処理に加え、側面まで均一に加工するための高度な工程管理が欠かせない。そこで、Appleとの共同検証を通じて、新たな高精度の物理研磨による前処理工程を導入した。さらに、業界初とする「ゼロ粘着性の段差付き粘着フィルム」を採用。パッケージの側壁全体を覆うように成膜しながら、底面への不要な成膜による汚染や、部品を取り外す際にコーティング層が損傷する問題など、従来の製造工程で課題となっていた点の解決を図った。

フォックスコンの責任者は、「SoCスパッタリングプロジェクトは、鄭州航空港区の国有資本プラットフォームとの合弁会社である河南鴻創科技有限公司と進める初のプロジェクトだ。今年7月に生産を開始し、現在はiPhone 18シリーズに採用されている」と説明した。

同社は、従来の「世界の工場」としての役割から、先端技術を活用した製造プラットフォームを提供する企業へと事業モデルを進化させつつある。同時に、鄭州市と連携しながら地域産業の発展にも取り組んでいる。プロジェクトの拡大に伴い、将来的には新たに1,000億元(人民元)規模の産業集積が形成されると見込んでおり、河南省の経済発展にも継続的に貢献する考えだ。

製品パッケージの検査から組み立てまで、わずか1.9秒

高度な製造技術は、スマートフォン本体だけでなく、普段は見過ごされがちな製品パッケージにも生かされている。一見すると普通の紙袋や製品箱にも、中国の製造企業が培ってきた精密加工と自動化の技術が反映されている。

Appleの主要サプライチェーンパートナーである裕同科技(YUTO)は、2016年に深圳証券取引所に上場した企業で、Apple製品の外装パッケージを主に手掛けている。同社の河南省許昌市にある工場では、包装用の自動光学検査設備が稼働している。生産ラインのタクトタイムはわずか1.9秒。iPhone 18シリーズの製品箱について、10面を連続して撮影し、計64枚の高精細画像を取得する。得られた画像をデータベースと照合し、アルゴリズムによって極めて微細な外観上の欠陥まで検出する仕組みだ。

製品箱の組み立ても、1個当たりわずか1.9秒で完了する。17個の部品と36の工程からなる組み立て作業を、高速自動化ラインによって実現している。

裕同科技の責任者によると、同社は高精度のマシンビジョンとロボットアームによる位置合わせ技術を採用し、箱本体と外装材の接合部分を隙間なく仕上げている。さらに、折り曲げ工程の移動量や空気圧を精密に制御することで、角部分も平滑で美しい仕上がりを実現している。

カーン氏は、「製品のパッケージは、ユーザーが商品を受け取った際に最初に触れるものだ。開封する瞬間から、心地よい体験を提供したい」と話す。その実現に向け、Appleは裕同科技をはじめとするパートナー企業とともに、構造の精度、色の均一性、品質の信頼性などを追求し、多くの時間と資金を投入してきた。

(写真は、裕同科技とAppleが共同開発したUV速乾インク技術。同技術により、網点の再現性とインク量を精密に制御できる。)

両社の協力では、環境負荷の低減に向けた包装材料の開発も重要なテーマとなっている。裕同科技の董事長兼総裁を務める王華君氏は、「パートナー企業との共同の取り組みにより、Apple製品のすべてのパッケージからプラスチックを取り除くという目標を達成した」と説明する。

例えば、iPhoneの外箱では、従来の熱収縮フィルムを全面的に廃止し、紙製の開封用シールに切り替えた。また、箱の内部で製品を固定するトレーには、サトウキビの搾りかすや竹繊維を原料とするパルプモールドを全面的に採用している。

さらに、裕同科技とAppleが共同開発した水性ニスによる環境配慮型コーティングは、従来のプラスチックラミネート加工に代わるものだ。耐摩耗性は業界基準の8倍に達し、プラスチック使用量を年間3,000トン以上削減しているという。

こうした取り組みは、パッケージの品質や開封時の使い心地を維持しながら、環境負荷を低減することを目指すものだ。精密な加工技術と環境配慮型素材の開発を組み合わせ、サプライチェーン全体の付加価値向上につなげている。

鄭州工場で出荷準備が加速 iPhone Duoの予約登録は207万人超に

カーン氏は、「裕同科技の工場も、フォックスコン鄭州工場の生産ラインや物流現場も、現在は非常に忙しい。一日も早く製品を世界中のユーザーに届けたい」と語った。

『経済参考報』によると、10月16日(金)に発売される予定のApple初の折りたたみスマートフォンiPhone Duoは、河南省鄭州市にあるフォックスコンの中国工場で独占的に最終組み立てが行われている。発売を目前に控え、工場では出荷に向けた生産・在庫準備が急ピッチで進められている。

Apple公式サイトや京東(JD.com)、天猫(Tmall)などのECプラットフォームでは、すでに予約受付が始まっている。京東のApple製品公式自営旗艦店では、10月12日時点でiPhone Duoの予約登録者数が207万人を超えた。

折りたたみディスプレーの微細な凹凸を補正する3Dプリント技術、SoCの薄型化と放熱性能を支える直接スパッタリング技術、1.9秒で完了する精密な包装工程、そしてプラスチック使用量を削減する環境配慮型素材。こうした技術は、中国のサプライチェーン企業が単なる受託製造にとどまらず、先端技術の開発と高度な製造工程を担う存在へと進化していることを示している。

(中国経済新聞)