中国初のAI長編劇場映画が公開 今週の新作映画11作品

2026/10/22 11:39

今週、中国の映画館では11作品の新作映画が公開される。国際映画祭で受賞した話題作から、評価の高いアニメーション映画の再上映まで、多彩な作品がそろう。なかでも注目されるのは、中国で初めて上映許可証を取得した人工知能(AI)による超写実型の劇場長編映画『三星堆:未来往事』の公開だ。中国映画産業にとって、新たな節目となることが期待されている。

また、2021年に世界的な注目を集めた雲南省のアジアゾウの移動を記録したドキュメンタリー映画『象行記』も、アイマックスの大画面で上映される。実話を基にした感動作や、国際映画祭で高く評価された海外作品も登場し、今週の映画界を盛り上げる。

AI技術の新境地に挑む『三星堆:未来往事』

『三星堆:未来往事』(英題:Sanxingdui: Future Tales)は、中国で初めて公映許可証を取得したAI超写実型の劇場長編映画だ。人工知能を映像の一部に利用するだけでなく、映画制作の全工程に導入した意欲作として注目を集めている。

制作チームは2024年にAIを活用したSF短編ドラマ『三星堆・未来启示录』第1シーズンを発表。その後、約2年にわたる技術開発を経て、上映時間100分の長編映画を完成させた。制作過程では120万枚以上の基礎画像を生成し、作品全体の修正と改良を100回以上繰り返したという。

物語は、三星堆遺跡から出土した青銅器に刻まれた謎の記号を手がかりに、古代の蜀文明と未来のAI危機を結びつける。登場人物はすべて独自に制作されたデジタルキャラクターで、考古学資料を基に古代文明の世界を再現しながら、SFの視点からその謎に迫る。

AIが生成した映像は、劇場映画にふさわしい映像美や臨場感を実現できるのか。本作は、その可能性を大画面で確かめる機会となる。AIによる映画制作が従来の製作工程をどこまで変え、今後の映像産業にどのような新しい手法をもたらすのか、その点でも期待が高まっている。

野生のゾウたちの旅を描く『象行記』

『象行記』(英題:Elephant Journey)は、2021年に世界中の注目を集めた雲南省のアジアゾウの北上と南帰の旅を、大画面でよみがえらせる自然記録映画だ。

村々を通り抜け、川を渡りながら移動するゾウの群れ。その旅の途中では子ゾウも誕生し、多くの人々が生命の営みに心を動かされた。本作では、この壮大な移動の記録に加え、中国で初めて都市部を歩き、保護されたゾウ「阿宝(アーバオ)」の野生復帰に向けた取り組みも描かれる。

映画『フリーソロ』(英題:Free Solo)のアカデミー賞受賞制作陣が、3年にわたって熱帯雨林に入り、ゾウたちを追い続けた。アイマックス向けの特別な撮影方式を採用し、通常より約3分の1広い視野を実現したという。子ゾウの誕生や泥遊びなど、貴重な野生の姿を捉えるとともに、ゾウを守り続ける人々の日々の努力にも焦点を当てる。

雄大な自然とゾウたちの生命力、そして人間と野生動物の関わりを臨場感たっぷりに伝える作品だ。

歌声で未来を切り開く少女たち『勇敢女孩合唱团』

『勇敢女孩合唱团』(英題:The Brave Girls Choir)は、中国・貴州省の山あいを舞台に、少女たちの成長と希望を描く人間ドラマだ。児童文学作品『廖崩嗒佩合唱团』を原作とし、実話に着想を得て制作された。

物語の中心となるのは、農村で暮らす少女たち。合唱を通じて、臆病さや劣等感を乗り越え、少しずつ自信を身につけていく。苗族や侗族に伝わる伝統的な民謡と美しい村の風景も、作品に彩りを添える。

王硯輝、李浩菲らが出演し、農村教育を支える人々の温かな姿や、少女たちの純粋さと粘り強さを丁寧に描き出す。歌声が山々に囲まれた環境を越え、未来へ踏み出す力になるというメッセージが胸に響く。

今週公開されるその他の注目作品

『我的身后是祖国』(英題:My Motherland Stands Behind Me)

監督は肖璞。公開日は2026年10月25日で、ジャンルは記録映画。

中央新影が所蔵する約240万分に及ぶ映像資料を活用し、中国の朝鮮戦争参戦に関わった人々の記憶を掘り起こす。貴重な戦場映像を初公開し、8か月以上をかけて一コマずつ4K画質への修復とカラー化を実施した。高齢の元兵士20人以上に聞き取りを行い、約100人の証言から7人の物語を選び出して構成している。名もなき兵士や後方支援に携わった人々の経験を通じて、「祖国が自分の背後にある」という言葉の意味を伝える。

『武汉任务』(英題:Wuhan Mission)

海外で先行上映された後、中国で公開される抗日戦争映画だ。公開前にはトロント、オタワ、バンクーバーの3都市で上映され、「1938希望箱」を通じて北米の観客から寄せられた祝福のメッセージが中国へ届けられる。2027年の春節前後には北米の映画館でも公開される予定だ。

監督の郭洪涛は、中国の古典小説『紅楼夢』を英語で映画化した初の監督として知られる。湖北省出身の俳優・史可が、激動の時代を生きる女性リーダー「黒嫂子」を演じる。

『愤怒的老虎』(英題:The Angry Tiger)

閉ざされた古い屋敷を舞台に、息詰まる緊張感と幾重ものどんでん返しを描くサスペンス映画。朱正廷がこれまでのイメージを覆す役柄に挑み、蒋夢婕、祖峰、黄璐らと共演する。

虎の姿を人間の内面に重ね合わせ、何気ない日常に潜む悪や欲望をあぶり出す。恐怖と謎解きの要素を盛り込みながら、人間の本性を問いかける作品となっている。

『落凡尘』(英題:Into the Mortal World)【再上映】

広州美術学院の卒業制作として話題を集めた短編作品を基にした中国風の幻想的なアニメーション映画。牛郎織女の伝説を単なる恋愛物語として描くのではなく、二十八星宿の神話世界へと物語を広げている。

織女の子孫である金風と人間界の少女・小凡が、力を合わせて冒険を繰り広げる。緻密で美しい中国風の美術表現も見どころだ。

『恐怖直播』(英題:Horror Live)

生配信の空間を恐怖の舞台へと変えるホラー映画。実際の映像記録を思わせる撮影手法により、観客も配信者と一緒に事件へ巻き込まれていくような臨場感を演出する。

心霊スポット探索という刺激的な設定の裏側には、閲覧数や注目を追い求める時代の好奇心、虚偽、そして情報の危うさが潜んでいる。

『生日快乐』(英題:Happy Birthday)【エジプト】

トライベッカ映画祭で3部門の賞を獲得し、エジプト代表としてアカデミー賞国際長編映画賞に選出された作品。女性監督サラ・ゴハールが、カイロで働く8歳の少女トハの視点を通じて、都市に根深く存在する貧富の格差を描く。

誕生日パーティーをきっかけに、子どもの純粋な願いと社会の厳しい現実が交錯する。何気ない日常の描写の中に、深い感情をたたえた物語だ。

『小羊肖恩3:怪兽来袭』(英題:Shaun the Sheep 3: The Beast of Mossy Bottom)【フランス・英国】

英国のアードマン・アニメーションズが手がける人気の粘土人形アニメーションシリーズ第3作。10万コマを超える映像を一コマずつ撮影した、手作りならではの温かみが魅力だ。

せりふを使わず、登場人物の動きや表情だけで笑いを生み出す。ショーンが「風変わりな科学者」のように大騒動を巻き起こし、ハロウィーンの農場は大混乱に陥る。英国らしい乾いたユーモアが詰まった、家族で楽しめる作品だ。

多彩な作品がそろう今週の映画界

今週は、人工知能による映画制作の可能性を探るSF作品から、自然や社会、人間の内面を見つめる物語まで、幅広い作品が公開される。

(中国経済新聞)