10月17日、上海大歌劇院(上海グランドオペラハウス)が正式に開幕した。夕暮れ時、黄浦江のほとりに輝く「中国の扇」をモチーフとした壮麗な建築が、その姿を世界に披露した。第25回中国上海国際芸術祭の一環として、新劇場の開幕記念コンサート「上海大歌劇院とその仲間たち(Shanghai Grand Opera House and Its Friends)」が開催され、中国と西洋のオペラの名曲が響き合った。中国国内外の第一線で活躍するアーティストたちが同じ舞台に立ち、新たな文化ランドマークの幕開けを華やかに彩った。
開幕記念コンサートの開演に先立ち、上海大歌劇院のパブリックホールでは、モーツァルトのオペラ《フィガロの結婚》序曲(The Marriage of Figaro: Overture)が演奏された。

張誠傑の指揮のもと、上海歌劇院交響楽団と上海フィルハーモニー管弦楽団の演奏家による合同オーケストラが、来場者の待機エリアで思いがけない音楽の贈り物を届けた。さらに、上海歌劇院の若手アーティスト、烏列熱(ウーリエルー)と王煉が登場。《ジャンニ・スキッキ》の「私のお父さん」(O mio babbino caro)、《トスカ》の「星は光りぬ」(E lucevan le stelle)、そして《椿姫》の「乾杯の歌」(Brindisi / Libiamo ne’ lieti calici)を披露した。
各階に配置された上海歌劇院合唱団の歌手たちも、サプライズ形式で次々と登場。《魔弾の射手》の「狩人の合唱」(Hunters’ Chorus)、《カルメン》の「闘牛士の歌」(Toreador Song)、そして《トロヴァトーレ》の「鍛冶屋の合唱」(Anvil Chorus)などを歌い上げた。劇場の公共空間そのものが舞台となり、観客を音楽の世界へと誘った。
「中国の扇」と音楽が織りなす壮麗な舞台
開幕記念コンサートは、約2,000人を収容するレッドホールで幕を開けた。
照明が点灯すると、観客席から驚きの声が上がった。建築の象徴である「中国の扇」のイメージが舞台にも展開され、ピアノの白と黒の鍵盤という普遍的な音楽のシンボルと融合。昇降式のクリスタルライトが旋律に合わせて形を変え、まるで音符が空間を流れるかのような光景を生み出した。
扇形のLEDスクリーンも楽曲に合わせて光と色彩を変化させ、音楽と視覚芸術が一体となった幻想的な空間を演出した。劇場が掲げる「世界のオペラ芸術の殿堂」という理念を体現する舞台は、光と音が織りなす一幅の絵巻のように、観客の目の前にオペラの魅力を広げた。
コンサートの幕開けを飾ったのは、上海交響楽団による《紅旗頌》(Ode to the Red Flag)だった。「七一勲章」受章者である作曲家・呂其明が手掛けたこの管弦楽作品は、1965年の「上海の春」音楽祭で誕生した。壮大な交響楽の響きを通じて、歴史の記憶と祖国への思いを表現する中国管弦楽の代表作である。

誕生から60年以上を経た今、上海で生まれたこの名曲が、黄浦江のほとりに新設された歌劇場の芸術的な歩みを告げる作品として再び響き渡った。中国の音楽文化が持つ歴史と精神が、新たな時代の幕開けと重なり合う瞬間となった。
続くプログラムでは、世界のオペラ史を彩ってきた名曲の数々が披露された。ロッシーニの《セビリアの理髪師》より「私は町の何でも屋」(Largo al factotum)、ドニゼッティの《愛の妙薬》より「人知れぬ涙」(Una furtiva lagrima)、ベッリーニの《ノルマ》より「清らかな女神よ」(Casta diva)など、イタリア・ベルカント・オペラの輝かしい伝統を示す作品が並んだ。
さらに、モーツァルト、ビゼー、ヴェルディ、プッチーニらの代表作も次々と登場。イタリア語、フランス語、ドイツ語など、多様な言語で歌われる名旋律が、独唱、二重唱、四重唱、合唱とさまざまな形式で展開された。異なる声域や音楽様式、ドラマの情景が連なり、オペラ芸術の奥深さと豊かな表現力を浮き彫りにした。
中国の作品にも大きな注目が集まった。新時代の中国の繁栄を温かく描く歌曲《灯火里的中国》(China in the Lights)は、今回初めて合唱版として編曲され、新たな姿で披露された。
その後、中国の民族歌劇《党的女儿》(Daughter of the Party)や、オリジナルの叙事詩的歌劇《長征》(The Long March)の名場面など、現代の声楽作品と中国オペラの名曲が続いた。
ヴェルディの《ナブッコ》から「行け、わが思いよ、黄金の翼に乗って」(Va, pensiero)、プッチーニの《トゥーランドット》から「誰も寝てはならぬ」(Nessun dorma)まで、世界中で親しまれている旋律が新しい舞台に響き渡った。国内外の名歌手たちによる共演は、異なる文化を音楽でつなぎ、会場に大きな感動をもたらした。
今回の開幕記念コンサートには、中国と海外を代表する指揮者や歌手が集結した。中国フィルハーモニー管弦楽団の芸術監督であり、上海交響楽団の音楽監督を務める余隆、中国音楽家協会主席の張国勇、上海歌劇院の芸術監督・許忠という3人の指揮者が、それぞれ上海交響楽団や上海歌劇院合唱団などを指揮し、ステージをリレー形式で盛り上げた。
また、上海音楽学院院長の廖昌永と上海歌劇院院長の石倚潔も、歌手として舞台に立った。バリトン歌手の廖昌永は、《セビリアの理髪師》の「私は町の何でも屋」(Largo al factotum)を披露。テノール歌手の石倚潔は、レハールの《微笑みの国》から「君はわが心のすべて」(Dein ist mein ganzes Herz)を歌い上げた。さらに2人は、ビゼーの《真珠採り》から名高い二重唱「聖なる神殿の奥深く」(Au fond du temple saint)を共演し、卓越した歌唱力と舞台上の存在感を示した。
海外からは、ペルーを代表する世界的テノール歌手フアン・ディエゴ・フローレスが出演。《愛の妙薬》の「人知れぬ涙」(Una furtiva lagrima)を歌い、オーストラリア出身の新進ソプラノ歌手シヴォーン・スタッグは、《ノルマ》の「清らかな女神よ」(Casta diva)を披露した。
さらに、中国の歌手である黄英、沈洋、朱慧玲も加わり、モーツァルトの《コジ・ファン・トゥッテ》から「岩のように動かず」(Come scoglio)を歌い、ヴェルディの《リゴレット》から「美しい恋の乙女よ」(Bella figlia dell’amore)の四重唱を共演した。異なる声質と芸術的個性が響き合い、世界のオペラの魅力を多角的に表現した。
中国の歌手、雷佳と閻維文も、中国作品の魅力を伝える重要な役割を担った。雷佳は民族歌劇《党的女儿》から「万里の春色、故郷を満たす」(Spring Fills Our Homeland for Thousands of Miles)を歌い、閻維文は叙事詩的歌劇《長征》から「愛する人よ、聞こえますか」(My Beloved, Can You Hear Me?)を披露した。2人の歌声は、中国の物語に深い感情と真摯な表現をもたらした。
今回のコンサートは、中国の赤い記憶を伝える交響楽から世界のオペラの名作へ、さらに中国の民族歌劇や現代の声楽作品へと展開し、最後には時代を超えた共感へと結実する構成となった。
中国の管弦楽、西洋オペラ、民族歌劇、交響楽という4つの柱を通じて、異なる言語、様式、時代の音楽が互いに呼応した。その構成は、上海大歌劇院が中国に根差しながら、世界へと開かれた芸術の拠点を目指す姿勢を明確に示している。
コンサートのフィナーレでは、ベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章「歓喜の歌」(Ode to Joy)が、レッドホールからパブリックホールへと響き渡った。
舞台と公共空間の境界を越えて広がる音楽は、劇場と観客との距離を縮め、建築、観客、演奏空間が一体となる新しい文化体験を生み出した。上海大歌劇院は、単に公演を鑑賞する場所ではなく、市民が芸術と出会い、交流する「人民都市の文化的リビングルーム」としての可能性を示した。
上海大歌劇院が目指すのは、舞台上の公演だけにとどまらない芸術文化の発信である。今後は、同劇場独自の芸術教育ブランド「goGO踏歌行」を通じて、芸術体験を日常へと広げていく。プログラムは「歌永言」「放歌遊」「弦歌外」「歌且搖」の4つのカテゴリーで構成され、マスタークラス、劇場ツアー、パブリック展覧会、親子向けワークショップなど、多様な活動が予定されている。
演目を鑑賞するだけでなく、建築を理解し、芸術に親しみ、創作に参加する。そうした舞台の外での経験を積み重ねることで、劇場は公演会場から、誰もが芸術と触れ合える開かれた文化空間へと発展していく。
そこには、「海納百川、追求卓越、開明睿智、大気謙和」という上海の都市精神が息づいている。多様性を受け入れ、卓越性を追求し、開かれた知性と寛容さを大切にする精神が、新たな文化ランドマークの空間に表現されている。
「中国の扇」が世界に向けて奏でた第一声。それは、新しい歌劇場の誕生を告げるだけでなく、中国と世界、芸術と市民、舞台と日常をつなぐ、新たな文化交流の始まりでもある。
(中国経済新聞
