中国では、中秋節と国慶節が重なる大型連休を利用した旅行が活況を呈している。中国の主要オンライン旅行予約サイト(OTA)によると、10月1日の国内観光地の入場券予約は前年同期比で約30%増加した。海外旅行でも、現地送迎の予約が43%増、現地アクティビティーが37%増となるなど、国内外で旅行需要が大きく伸びている。
今年は中秋節と国慶節の間隔がわずか3日しかないため、早めに出発して長期間旅行を楽しむ人が増えている。10月1日時点で、すでに2つ目の都市を訪れている旅行者は全体の20%に達し、2都市以上のホテルを予約した人も約3割に上った。ホテルの平均宿泊日数は3.2日で、4都市以上に宿泊する人は前年同期比53%増加した。
中国人旅行者が世界2000都市超に
中国の旅行予約サイト「去哪儿旅行」によると、10月1日は国慶節期間中のホテル宿泊者数がピークを迎える見通しだ。人気都市のホテル予約数は前年同期比で約20%増加。中国国内では1000を超える県級都市のホテルや民宿にも旅行者が足を運ぶ一方、海外でも2000を超える都市で中国人旅行者の姿が見られるとみられている。
長期化した休暇を背景に、遠距離旅行も好調だ。2000キロを超える航空路線の予約数は前年同期比で4割以上増加した。また、複数の都市を一度の旅行で巡る「多都市周遊」も広がっている。若者の間では、地域の歴史や文化を感じられる観光地への関心が高く、「没入型の舞台」「花火」「夜間観光」などの検索数は前年同期比で5割以上増加した。
「映える観光」から、土地本来の魅力を楽しむ旅行へ
中国の旅行市場では近年、定番の観光地やSNS映えを狙ったスポットを避け、地方都市や郊外を訪れる「反向旅游(逆張り観光)」が注目されてきた。
その次のトレンドとして、今注目を集めているのが「原生旅游」だ。「原生旅游」とは、人工的に整備された観光施設や、どこか似通った「映えスポット」ではなく、その土地に残る自然や伝統文化、村の風景、人々の暮らしそのものを楽しむ旅行スタイルを指す。
旅行予約サイトの飛猪(フェイジュー)によると、国慶節期間中、自然景観や農村・集落をテーマにした旅行商品を購入したユーザー数は前年同期比で約50%増加した。ハイキングや登山体験の予約者数は約80%増え、ラフティングは90%超、オフロード体験も80%超の伸びとなっている。
「有名な観光スポットを訪れて写真を撮る」だけではなく、その土地ならではの自然や文化、暮らしを実際に体験したいという旅行者が増えているようだ。都市観光だけでなく、山岳観光への関心も高まっている。全国の有名な山岳観光地では予約数が前月比で200%以上増加し、登山や秋の景色を楽しむ旅行が人気を集めている。旅行会社の途牛によると、10月1日は国慶節連休全体の旅行需要のピークとなった。長距離旅行、じっくり観光を楽しむ旅行、家族旅行など、さまざまなニーズが一斉に高まっている。
国内のパッケージ旅行では、団体旅行と個人旅行の双方で予約が増加。10月1日の旅行者数はいずれも前年同期比で2桁の伸びとなった。

クルーズ旅行も国慶節の人気商品の一つとなっている。愛達郵輪(Adora Cruises)では、国産初の大型クルーズ船「愛達・魔都号」が10月1日、4000人を超える乗客を乗せて上海を出港した。7日6泊の国慶節特別クルーズで、日本などを巡る航程が組まれている。また、「愛達・地中海号」も2600人を超える乗客を乗せて天津を出港し、7日6泊の国慶節クルーズをスタートさせた。
各地で発行されている「文旅消費券(文化・観光消費券)」も、旅行需要を押し上げる要因となっている。同程旅行によると、10月1日、同社のアプリやミニプログラムで文旅消費券に関する検索数が前月比で4倍以上に増加した。検索が多かった省は広東、四川、江西、青海など。都市では蘇州、南昌、ハルビン、贛州、ラサ、徐州、塩城、臨沂などが上位に入った。
同程旅行は国慶節期間中、広東省や蘇州市など10を超える地域の文旅消費券キャンペーンに対応している。観光客の呼び込みだけでなく、飲食や宿泊、レジャーなど地域の消費を促す施策として、各地の観光消費券が大型連休の旅行需要を支えている。
AIで渋滞回避、旅行計画を立てる人も
旅行者の行動を変えているのは、長期休暇や消費券だけではない。AIを活用して旅行計画を立てる人も増えている。国慶節初日は主要都市で出発客と到着客が集中し、人気観光地周辺では道路の混雑が目立った。こうした状況を受け、渋滞を避けるルートや、混雑する時間帯を避けた観光プランをAIに相談する旅行者が増えている。
同程旅行の旅行AIエージェント「DeepTrip」では、10月1日午前の旅行ピーク時間帯に1時間当たりのアクセス数が通常の3倍以上に増加した。交通手段の選択や旅程の作成、人気観光スポットに関する質問が特に多かったという。AIが単なる検索ツールではなく、交通や宿泊、観光を組み合わせて旅行プランを提案する「旅行アシスタント」として使われ始めている。
「多都市周遊」と「体験型観光」が新たな潮流に
今年の国慶節旅行では、長期休暇を生かして複数の都市を巡る「多都市周遊」と、その土地ならではの自然や文化を体験する「体験型観光」が大きな潮流となっている。旅行者の関心は、有名な観光地を訪れて写真を撮ることだけではなく、「その土地の物語に入り込む」ような体験へと広がっている。自然景観や農村、登山、夜間観光、没入型のエンターテインメントなど、現地でしか味わえない体験を重視する傾向が強まっている。
中国の旅行業界では、こうした「体験+」型の新たな観光サービスが、これまで観光地としてあまり知られていなかった地域にも新たな旅行需要をもたらす可能性がある。
(中国経済新聞)
