イギリスの製薬大手・アストラゼネカは現地時間11月12日、第3四半期の決算報告を発表した後に、CEOであるPascal Soriot氏が中国法人社長の王磊氏が拘束されたことについて初めて反応を示した。「王氏は現在、弁護士と話し合っている。新しい情報はつかんでいない」と述べている。
ただしSoriot氏は、「中国には従業員が16000人以上いるが、残念ながら、売上高をできる限り伸ばそうと『誘惑』を受ける人もいる」と述べ、本社のコンプライアンスが不十分という指摘を否定した。また、「中国で200人以上のコンプライアンス担当スタッフを強化した上、あらゆる不当な行為を監視するために駐在員も設けており、AIを使って営業担当の経費報告などを審査している」とも述べた。
Soriot氏は、「中国事業は長年にわたり取り組む。また中国で4.5億ドル(約701億円)相当の工場を建設するという以前の計画も今のところ変更はない」と強調した。さらに、「中国事業を分割するという選択肢はこれまで検討したことがない」とも述べた。
アストラゼネカは10月30日夜、中国法人の社長である王氏が取り調べを受けていると発表した。業界情報では、発表の翌日にこの件に対応するため本社の幹部が中国に派遣されたとのことであるが、協議の内容は不明という。アストラゼネカは11月6日に臨時の投資家会議を行い、王氏の拘束について最新の情報を明らかにしたが、「中国当局の取り調べは幹部個人に対するもので、会社の事業には絡んでいない」と強調している。
投資家会議では、王氏のほかに幹部および元幹部の2人が、香港から中国に治療薬を不正輸入した疑いで取り調べを受けていると発表された。
ある機関投資家によると、アストラゼネカはさらに「中国事業はかねてから成長を支えてきたが、すでに伸びが鈍化している。中国は審査の期間や医療保険関連の協議、一括集中購買、治療薬に関する販売や営業費用の増大といった特殊な要因で、一部の地域では利益率に支障が出ているので、投資家は注意するように」と強調したという。
またアストラゼネカは、アメリカで事業を拡大している。20億ドル(約3117億円)をかけて研究開発やバイオ薬品の生産、細胞療法を手掛ける工場を建設中と発表した。会社の予想ではアメリカでの投資総額は2026年末に35億ドル(約5456億円)となり、メリーランド州、テキサス州、カリフォルニア州の生産拠点に新たに投資するという。
(中国経済新聞)