私はテンセントの実験室「Robotics X」生まれ。夢は人協働ロボットになることだ。(人や環境に馴染めるロボットのこと)。
なぜ「ザ・ファイブ」というのか。
それは、これまでの4代のロボットが経験や実践を重ねたことで、4本の脚が車輪状になり、広範囲での皮膚の触覚をつけ、何本もの指を持ち、安全に人とのやり取りができるなど、様々な能力を身につけたからなのだ…..
2020年、4つ足歩行型のJamoca;2021年、輪脚融合型のOllie;2021年、マルチモード4つ足のMax;2023年、ロボットハンドのTRX-Hand
みな私の先輩のようなもので、実際の場面で歩いたり物を運んだり、複雑な仕事をし、人とやり取りすることを教えてくれたのだ。
そして今回、老人ホームでお年寄りに小包を渡したり、お年寄りを抱き起したり一緒に運動したりする場を用意してくれた。
今回、タスクをこなすまでに次のような準備をしてきた。
1. 運動能力や物を持つ力をつける
私は足を車輪状することができ、障害物を乗り越えることも、効率よく物を運ぶこともできる。平らなところでは4輪モードになったり2輪モードになったりできる。
それに、平らでない所では伸ばした足を伸び縮みできる。力をコントロールしてばねでぶら下がるような形となるので、上半身もしっかり安定する。
階段や道路の縁石など凹凸面では、足が車輪状になってすいすいと前に進める。
物を運ぶ時は、全部の足がそれぞれ別々に伸び縮みできるので、力が一段とアップする。
どんな空間であっても「上も届き地面も届く」(小包を持ったり物を置いたりすることもOK)ということである。
でも、大人を抱きかかえるのと小包を持つのでは負荷が随分違うので、先輩たちがデュアルエンコーダのハイパワーな制御装置(最大トルク500Nm、直径120mm,、重さ2.8kg)を取り付けてくれた。大人でも持ち上げられるのだ。
2. 高度なセンシング機能と柔軟な制御
タスクをしっかりこなすには、環境を見極め、計画を立ててそれを実行しなくてはならない。
私の身体には制御フレームがついていて、環境情報を察知してそれを認識し、正確に位置づけ、複雑な周辺環境に適応する。こうして、どんなスペースであっても安定して運動能力を発揮できるわけだ。
環境認識:広範囲で複雑な環境で、目視による高精度な位置や状態の見極め
レーザーレーダーやIMUなどのセンサーによって、高頻度で遅延がなく精度の高いリアルタイムオンラインポジションや作図(SLAM)システムもあり、車輪と足を合わせた距離計もあって、環境や自分の状態を一段とよく把握できるようになっている。
計画の策定:マルチレベル(経路レベル-軌跡レベル)でのオンライン運動
レーザーレーダーやRGBDカメラなどのセンサーのデータを使って、周囲の環境における動く障害物や動かない障害物を適時に察知し、オンラインで最適なルートや制御指示を作り出すことで、衝突や事故の発生を防ぎ、複雑な環境の中で安全かつ効率的に仕事を果たせるようになっている。
計画の実行:様々な周辺環境に適応する、移動と操作が一体化した全身運動制御
普通に存在する階段など、障害物のある環境では、地形を認識した上で様々なモードに速やかに切り替え、スピーディーに対応する。
安全で快適な人とのやりとり
お年寄りを介助するのは抱き起こすより難しく、快適で安全と感じさせなくてはならない。
まず、目で人を速やかに見つけ出して状態を認識し、介助が必要なお年寄りをすぐに見つけ出す。
それから、高齢者の動きの特性を学習し、介助の際のデータを若干集めて、お年寄りが気持ちよいと感じられるベストな動きを練習していく。
最後に、解像度の高い触覚により一段と安全で正確な形でサポートやアシストができるので、お年寄りがストレスを感じたり傷ついたりせずに済む。
実際の生活環境はもっと複雑だ。プロトタイプである私は、まだまだ努力を重ね、練習を重ねなくてはならない。
人の暮らしにもっと役に立つようになりたいものである。
(中国経済新聞)