中国のパソコン大手「レノボ・グループ」が5月23日に発表した決算報告を見ると、2024年3月31日までの年間売上高は前年比8%減の568.64億ドル(約89.2兆円)、純利益は同37%減の10.11億ドル(約1586億円)と厳しい数字が示されている。レノボは、「純利益ダウンは上半期に業界全体が不振に陥ったため」と表明している。
PC市場は2022年から「在庫掃き出し」に入り、電子機器業界が世界的に冷え込んでレノボもそのあおりを受けている。データによると、2022/2023年度、世界の個人用パソコンの出荷台数は前年比16%減の2.85億台であった。その中でシェアトップを維持しているレノボも、出荷台数は前年比17%減の6810万台であった。
ただしこのところ、AIGCの普及や買い替え時期が迫ったことで、PC市場に回復の兆しが見え、レノボも低迷脱出の光が見えている。最新のデータによると、2023/2024年度の第四四半期、売上高は前年比9%増の138.33億ドル(約2.17兆円)、純利益は118%増の2.48億ドル(約389億円 )で、この時期としては過去3番目の高さであった。
レノボ・グループの会長兼CEOである楊元慶(Yang Yuanqing)氏は、全員あてのメールで「業界の後退時期をのり切り、AIという新たな成長の好機をとらえようとしている。今年4月に中国初のAI対応PCを発表し、『混合AI』との戦略を打ち出した」と表明した。楊氏は2024/2025年度の決起集会で、「混合式AIはこれからのトレンドになり、個人と企業クラスのAIが一体でパブリックAIモデルと相互補完する」と述べていた。
先ごろマイクロソフトが、内蔵したAIアシスタントCopilotが、OpenAIがこのほど発表したGPT-4oモデルでも使えるという、PCの形態自体を改めるものとされるWindows 11 AI PCを発表した。またその前にも、同じくPCメーカーのデル、ASUS、HPなどが多くのAI PCを打ち出し、シェア獲得を目指している。
北京市にある中国社会科学院副研究員の王鵬(Wang Peng)氏は、「今は世界の大手PCメーカーがみなAI PCを手掛け始めており、レノボはその競争に巻き込まれている。競争の激化により商品価格も下落して利益が薄まるなどの悪影響も出るだろう。またレノボは、ライバル各社の技術革新や市場戦略により、シェアやブランドイメージについても逆風に見舞われそうだ」と述べている。