テスラ、全世界で人員削減 主な対象は米中両国

2024/05/14 07:30

アメリカの電気自動車大手・テスラが、4月中旬から世界的な人員削減を進めている。この中で、米中両国が主なターゲットとなり、営業部門だけでなく充電、ソフトウェア、サービス、エンジニアリング、あるいはHRまでも対象となっている。

テスラは4月15日、最高経営責任者(CEO)のマスク氏が全社員にあてたメールで、これからの成長へ手はずを整えるためにコスト削減や生産率の向上を図るべく、全世界で人員を「10%以上」削減すると発表した。社員のうち1.4万人が対象となる。

その後、米中両国で営業や技術スタッフの大規模なリストラが進んだ。中でも中国の削減幅は予想をはるかに超えており、関係者によると対象部門も多く、削減割合もマスクCEOの言う10%どころか20%前後であり、中には30%~40%、あるいは50%に達する部署もあって、特に営業部が狙われているという。マスクCEOは以前に、「営業や納入の仕組みをシンプル化している。ともに今や『複雑で低効率』になってしまった」と述べている。

上海の工場もリストラ対象である。関係者によると、人員削減はカスタマーサービス、エンジニア、ライン工、物流スタッフなど各部署に及ぶが、削減の規模やその後の影響は定かではないという。またこの春の新卒採用も中止し、offerを取り消された人もいるという。

さらにテスラは5月5日にメールで、受付やセールスだけでなくソフトウェア、サービス、エンジニアリング、あるいはHRまで削減対象とすると発表した。マスクCEOは幹部陣に対しても、「さらなる削減をしないと幹部自身を解雇する」との最後通告を発した。

マスク氏CEOは4月末、アメリカで、急速充電部門を丸ごと廃止して500人以上を削減しており、この時に同部門の責任者であるレベッカ・ティナッシ氏や、新製品の責任者であるダニエル・ホー氏も退社している。この措置でテスラの充電事業の見通しを危ぶむ声も上がった。また世界的に見ると、パワートレイン・電気工学部門のシニア・バイスプレジデントであったドリュー・バグリーノ氏と、公共政策・事業開発部門のバイスプレジデントだったローハン・パテル氏が4月15日に退社を発表するなど、幹部陣が次々と姿を消している。特にバグリーノ氏はマスク氏の右腕的存在で、勤務歴もかなり長かった。

さらにドイツでは、臨時従業員300人を解雇したのに続いて「低迷しているEVの売上が課題となっている」との理由で、ベルリン工場で400人を削減する予定という。ドイツの工場にはおよそ1.2万人がおり、テスラは今回の人員削減について「希望退職」との形をとると強調している。 

このように揺れ動く中、テスラは執行役員の朱暁彤(トム・ジュウ)氏をテキサス州の本社から中国に戻したと複数のメディアが報じた。朱氏は製造やマーケティングの方針を切り替えて市場での立ち位置を強化するほか、運転支援機能(FSD)の中国導入へ全力で取り組むものと見られている。

ただし関係者の話によると、今回の人員削減に関してテスラは「給与のN+3か月分」という補償金を用意している。入社から半年以下の社員は「0.5N+3か月分」となり、もともと基本給が高いので4万~5万元が手に入る。また動作も急激であり、ある社員によると、オフィスに呼び出されてから退社手続き完了までわずか5分間だったという。内定切りとなった新卒生には1か月分の基本給が支給される。動きも急で補償も手厚いためか、「小紅書」などSNSで解雇の不満を訴えるケースも少なく、「良心的な会社だ」とのコメントまで出ている。

(中国経済新聞)