中国で無名のスマホメーカー社長、年間売上高は1.25兆円

2024/03/7 11:00

中国の携帯電話メーカー「伝音」(Transsion)は、アフリカで40%以上のシェアを誇りながら中国国内では販売をせず、無名の存在である。TECNO、itel、Infinixという3種の銘柄を有し、2023年のスマートフォン販売台数は9400万台を超えている。 

伝音ホールディングスの2023年の決算速報値を見ると、売上高は前年比33.9%増の623.92億元、営業利益は同122.55%増の67.48億元、控除後の純利益は同129.36%増の50.68億元となっている。

伝音を立ち上げた竺兆江(Zhu zhaojiang)氏も、無名の人物である。1973年浙江省生まれ、1990年代初めに波導手機の携帯電話事業部門に3年間に勤務して、たちまち華北でセールスチャンピオンになった。抜群のスキルですぐに販売部門長になり、2003年から海外に派遣されて市場開拓を任された。資料によると、わずか2年間で600万台を売りさばいたという。

こうした海外での経験の積み重ねが、アフリカでの伝音の立ち上げにつながった。竺氏は2006年、副総経理という職務でありながら波導を退社し、起業したのである。

ローカライズを徹底して最高のコスパとした伝音は、アフリカでナンバーワンの存在感を示すものとなった。現地の好みに合わせて機能を随分と改良している。国信証券が2021年に実施したリサーチによると、伝音は、肌の黒い人の顔の輪郭、露出補正、画像効果などについて分析して、色黒の人の顔認識の問題を解決したほか、アフリカではプロバイダによって料金に差があることから、2枚挿し、あるいは4枚挿しの携帯電話を打ち出した。さらに充電が容易ではないことから、待ち受け時間が20日間以上という機種も出した。

IDCのレポートによると、伝音は2023年後半、新興国で売上が好調であり、アフリカ、パキスタン、バングラデシュ、フィリピンで出荷台数がトップだった。またCanalysの出荷レポートによると、伝音は2023年第4四半期にアフリカで23%の伸び率を示したという。

このような成果を上げている伝音は、中国では無名の存在である。同社のある社員は、「貧困国でのみ販売している」と言い、主力機種はみな低価格タイプである。中国元換算でおおむね1000元前後であり、最も高価な折りたたみ型でも4000元前後である。

資料によると、伝音は現在、70以上の国や地域で販売店を設けている。中でもアフリカでは出荷台数が何年もトップを維持し、2位のサムスンとの差は開く一方であり、マーケットシェアは40%以上に達している。

伝音のホームページを見ると、「African Business」が発表した「2023年度アフリカ人気ブランド100傑」の中で、伝音のスマホブランドであるTECNOが9位、Infinixが29位、itelが30位に入っている。中でもTECNOは中国勢のトップを守り続けている。

ただし、スマホ市場は飽和状態となり、今はシャオミ、OPPO、vivoなども新興国での売り込みに力を入れているため、伝音もうかうかしていられなくなる。Canalysによると、2023年第4四半期は中国各メーカーがアフリカで急激に成長しており、前年比伸び率はシャオミが88%、OPPOが156%、realmeが105%となっている。

(中国経済新聞)