アメリカのフォーブスが発表した2023年の中国の長者番付を見ると、順位がかなり変動している上、上位100人の資産額合計が過去最大となる5000億元(約10兆4500億円)以上も減少した。これまでしばしばトップに立った不動産会社の経営者が、軒並み債務問題でランキングリストからはじかれてしまった。
それでは、今回のベスト10の顔ぶれを見てみよう。
10位は、家電メーカー「美的」の創業者である何享健氏(81歳)で、保有資産額は191億ドルである。
美的は中国の家電大手であるが、この一族がどれほど力を備えているかはあまり知られていない。
「富豪は三代続かない」とも言われるが、何氏一族は違う。息子とその嫁、さらに2人の娘がいて、結束力もある上にみなビジネスに長けており、一族で上場会社が9社、さらに200社以上の子会社を抱えている。投資や提携を通じて巨大な王国企業を築き上げており、自動車の製造、医療、不動産、エネルギー、金融など各業界へ手を広げている。ただ美的は今、やり手の跡継ぎがいながらも代理人が切り盛りしており、こうしたモデルは中国で同族企業のお手本になっている。財産の引き継ぎという問題に際し、大事なのは分配することである。
9位は、世界最大の豚肉生産会社「牧原」の創業者で「豚王」と呼ばれる秦英林氏(57歳)であり、資産額は193億ドルである。普通の人とは違い、子供のころから将来は養豚をしたいとの夢を持ち、大学でもわざわざ牧畜系の学部を受験した。妻も獣医を目指しており、2人で力を合わせ、専門的知識を生かして、豚の体格の管理や栄養の配合、飼育環境などを最高のレベルに仕立て上げた。
飼育頭数は当初の22頭から、今は韓国の人口より多い6000万頭余りとなった。また、豚を気分よくさせて引き締まった肉にするため、金網の床に寝かせ、水道水を飲ませ、冬は暖房を用意し、夏は涼風を当て、飼料を自身で生産し秘伝の味をこしらえた。何から何まで自分でやったのでお金がかからず、2023年は豚肉価格が下落し多くの会社が損失を生んだ中でも揺るぐことはなかった。
8位は順豊(SFエクスプレス)の創業者で今年52歳の王衛氏で、「宅配王」と呼ばれ、資産額は199億ドルである。王氏は透明人間のような存在であり、会社設立から30年の間、公の場で話をしたのは指折り数えられる程度である。最近では2016年で、デリバリーが配達走行中に道端の車に接触してしまい、謝ったにも関わらず運転手が殴り掛かり、黙ってしょぼくれてしまった。その様子を通りがかりの人が映像に収めてネットに公開した。これを見た王氏は激怒し、それまでの沈黙を破ってWechatのモーメンツに「仲間たちに約束する。この件で徹底抗戦しないようでは会社の経営者失格だ」とのメッセージを流した。暴力の主は後に10日間拘束されたという。
さらに王氏は2017年、全米上場に際した鐘を鳴らすセレモニーで、殴られたデリバリーとともにステージに立った。