雲南省出身で高校の同級生である1990代生まれの楽楽さんと月亮さん。2010年9月に揃って名門・清華大学の金融学科に入学し、2014年7月に卒業した後、楽楽さんは上海交通大学で、月亮さんは北京大学でそれぞれ大学院生活を送った。
2人は大学で交際相手が見つからず、週末になると一緒におしゃべりをしていた。
2015年の正月には、ひたすら「見合い」について語り合った。
2人とも適齢期に達しており、親も親戚や友人に頼んで相手を紹介してもらったりしたが、いずれも2人の好みのタイプではなかった。見合い系のアプリは多かったが、詐欺行為や偽情報が氾濫していたことから、2人とも利用しなかった。
そこで楽楽さんと月亮さんは、「相手を探す手段がないならいっそ自分たちでアプリを作ろう」と奇しくも一致したのである。
「清華大学には、優秀で頼れそうだけれど1人自転車に乗る男子がわんさか。
北京大学には、美人で利口そうだけれど未名湖に寂しげな女子がわんさか。
交通大学には、落ち着いて前向きだけれど近くの女子大生と縁遠い男子がわんさか。
きれいでおしとやかだけれど、ツインタワー下でぶらついている女子が復旦大学にわんさか……
こんなこと、あってもいいの?
男子も女子も、どうして楽しく一緒に過ごせないの?」
楽楽さんと月亮さんは2015年1月8日、ユーモア感あふれるこのフレーズとともにアカウント「陌上花開(あぜ道に花開く)」を立ち上げた。
「あぜ道に花開く、緩緩と帰るべし」とは、呉越の国の王が夫人宛ての手紙に書いたメッセージで、「道端に花が咲いているから見ながらゆっくり帰っておいで」という意味である。
楽楽さんと月亮さんは、「相手はじっくり探せばいい。慌てて決めて一生後悔してはだめ」との願いを込めた。
ターゲットを中国各地の「985大学」(名門校)や世界ランキング上位1000位以内の大学に絞り、アカウントで独身男女の情報を発表し、メールで応募者の情報を受信する、という方式をとった。
2人はまた、アカウントに「大学4年間彼氏なし」と書き記し、これがかなりの共感を呼んだ。
そこで教師が、仕事が忙しくて付き合いも狭く相手が見つからないという大学のOBを何とかしようと、楽楽さんに依頼をした。
教師はまた楽楽さんに、「こういった取り組みはすごく意味があると思うよ」と伝え、これに刺激された楽楽さんはすぐにそのOBに連絡を取った。アカウントからの情報発信後、優秀でまじめな彼に対して多くの女性が想いを寄せた。
楽楽さんと月亮さんは150件以上のメールを5日間かけて整理し、本人に送信した。すべてのメールをじっくりと見た彼は、その中から好感を持った何人かを選んだ。
金融業界に務めている彼は、「まるで仕事案件を見ているみたいな感じだった」とユーモラスに語った。
その3か月後に彼はめでたく結ばれた。相手は清華大学出身の才女であった。これを聞いた楽楽さんは大喜びし、誇りに感じた。
ところが、このアプリ「陌上花开」が各大学に広まるにつれて、「パクリ行為」も始まり、本来楽楽さんと月亮さんが手にすべき信用や評価をさらっていった。世間に浅かった2人は世の中の厳しさを知り、落ち込んでしまった。
恋愛もスキルの一つで努力が必要
2017年末、楽楽さんは香港の外資系企業に、月亮さんは北京の外資系投資会社に就職した。
社会人になった2人は時間もとれず、パクリ行為の影響もあって「陌上花开」を閉鎖した。これを聞いたネットユーザーから、
「法的なサポートがいるならただでやってあげるよ」
「この仕事、何としても続けて欲しい!」
といったコメントが寄せられた。
こうした気遣いに心を打たれた楽楽さんと月亮さんは、「真似されるということはこの仕事が受けているということ。もっと上手くいって速く走れば、真似はされても越えられることはない」と考えるようになった。
2人は半年後に立て直しをはかり、婚活情報を寄せた人の中から見合いアプリの開発者を募集しようと考えた。
月亮さんは、履歴書にコーディングが趣味と書かれた曹さんという男性に興味を持った。顔写真を見るとなかなかのイケメンであり、楽楽さんもこの外見に惹かれてしまった。
結局、このコーディング趣味のイケメンな曹さんが採用され、3人でアプリの開発を始めた。そしてある日、月亮さんは「付き合おうよ」と書かれた曹さんのメッセージを受信したのである。
曹さんは楽楽さんと同じ上海交通大学の出身であり、価値観や人生観なども同じ2人は話も弾んだ。
楽楽さんは、曹さんの前向きで明るい性格や向上心のある生活態度も気に入った。そして2人は2018年12月15日、上海で入籍を果たした。
親友の大成功を見た月亮さんは、進んでアタックしようと決め、個人情報をアプリに掲載した。そこで何と、清華大学時代のクラスメートだった章さんがすぐに興味を寄せ、2人はすんなりと結ばれた。
「これまでずっと完璧主義で、身の回りの人を『吟味』していた。学歴が低い、性格がよくない、背が低い、挙げ句に辛い物が嫌い、だなんてえり好みしていた。この見合いアプリをやっていくうちに、自分にとって一番大事なことが何かがやっとわかった」と月亮さんは言った。
実際、月亮さんのように、自分がどんな人を求めているのかまるでわからない人は山ほどいる。
アプリに3年も情報を出しながら独り身を続ける人もいる。自分がもてると分かった時点で条件を引き上げるからである。
月亮さんは若者たちに、「最高の人などいない。いるのはふさわしい人」と伝えたい。
楽楽さんは2021年末に、「仲人」を生業にしようと決めた。
会社を辞めることについて親は、「清華大学出て結婚相談所?不安定な仕事じゃない」と反対した。
これに楽楽さんは、「普通の結婚相談所じゃなくて、中国全土ですごく大きいものなの。それに、縁結びなんてすごくいい行いじゃない」と説得に努めた。
物わかりのある親はそれに折れた。ただ、ゆとりのある生活をして欲しいとも言った。
また月亮さんも、「誰かが結ばれると年老いた母親のように嬉しく感じる」といった本心を胸に、年収100万元の仕事に見切りをつけ、「仲人」の道に進もうと決心した。
楽楽さんと月亮さんは、「素直、真実、真心、純愛」という価値観をもって、個性十分な婚活アプリを作ろうと決めた。
2人は、利用者すべてにありのままの自分を表現するよう勧めた上、ありのままの自分と他人を受け入れ、色々な良さを楽しんでほしいと願った。
そして、「認証+ユーザー通報」といった形で、飾らず安全に付き合いできる場を作り上げた。
こうした2人の真心に多くの人が心を打たれた。Annaさんは、このアプリ「陌上花開」を通じて今の夫を見つけた後に、アプリの仲人になった。
現在はフルタイム社員が10人、それもみな高学歴である。この優秀な「仲人」たちにとって、仕事は生活のためであり、また楽しく、価値あるものとなっている。
2人はまた、心の教育がおろそかにならないように婚活セミナーも打ち出した。恋する気持ちの正し方、付き合いを広げる手段、見合い相手との話の仕方など、恋愛スキルの向上を目指して様々な策を講じた。
アプリ「陌上花開」は、2022年6月現在でユーザー数が50万人に達し、見合い成功率は35%前後となっている。
現在、楽楽さんが窓口対応や商品の運営をし、月亮さんが技術開発やプログラム管理をしている。2人の親友がそれぞれ担当を抱え、協力しながら毎日楽しく好きな仕事に打ち込んでいる。
楽楽さん、月亮さんは多くの若者たちに、楽しい人になるなら意味のあることをすべき、と伝えたい。
人生には色々な道があり、果敢に夢を追えば願い通りのものになるのだ。
(中国経済新聞)