今年も中国の国慶節を一言で表すなら、「移動」だろう。交通運輸部の予測によると、国慶節7日間の連休中、全国の地域をまたぐ人の移動者数は延べ21億3,000万人に達する見通しだ。単純平均すると、1日あたり約3億人が移動する計算で、平日の約1.7倍に相当する。
中国のネット上では、「毎日、米国1国分の人口を丸ごと運んでいるようなもの」と表現する声もある。人が動き、街が動き、消費が動く――。巨大な人口を抱える中国ならではの「大移動」が、この7連休を熱気に包んでいる。
移動手段別に見ても、その規模は桁違いだ。鉄道当局の試算によれば、中秋節と国慶節を合わせた輸送期間中、全国の鉄道旅客輸送量は延べ2億8,400万人に達する見込み。1日当たりのピークは2,440万人を超えると予想され、国慶節期間として過去最高を更新する可能性がある。
航空も好調だ。9月25日から10月7日までの期間に、航空各社が輸送する旅客は3,119万人に達する見通し。1日当たりの旅客数はピーク時に260万人を突破するとみられ、前年同期を上回る水準となる。
今回の大型連休で圧倒的な主役となるのが自動車だ。交通運輸部によると、国慶節期間中の道路利用は全体の90%以上を占める見通し。連休初日の高速道路の交通量は7,100万台に達すると予想され、8月の1日平均と比べて約1.9倍となる。

さらに注目されるのが、電気自動車(EV)を中心とする新エネルギー車だ。連休初日に高速道路を走る新エネルギー車は、1,780万台に達する見込み。日常の交通量の約1.8倍に相当する。「電気自動車で実家に帰る」「EVで長距離旅行をする」といったスタイルは、もはや珍しいものではない。中国では、EVが長距離移動の主要な選択肢の一つになりつつある。
「近場」から「遠出」へ――長距離旅行が拡大。今年の国慶節には、もう一つ大きな変化がある。それは、人々がより遠くまで出かけるようになっていることだ。中国移動のデータ分析によると、500キロ以上の長距離移動は前年同期比11%増。上海―北京、成都―西安、深圳―長沙などの都市間で、人の往来が特に活発になっている。SNS上でも「長距離旅行」「秋の観光」に関連する話題の注目度が、前週比38%上昇した。1年間ためてきた休暇を使い、今年は「少し遠くまで行ってみよう」という旅行需要が強まっているようだ。
人が動けば、消費も動く。旅行者の移動は、当然ながら消費にも波及する。特に注目されているのがレンタカー市場だ。内モンゴル、遼寧、新疆など、自動車でじっくり観光するのに適した地域では、域外からのレンタカー利用に関連するアプリの1日平均アクティブユーザー数が前年同期比43%増となった。
また、今年の大型連休では「県域観光」も大きなテーマとなっている。中国の三線都市以下の地方都市へ向かう航空便の利用者数は、前年同期比30%以上増加。黄山、遵義、金華、興安盟など、これまで全国的にはあまり知られていなかった地方都市も人気観光地として注目を集めている。地方での域外消費も14.1%増となっており、観光客の地方分散が地域経済を押し上げている。
外国人観光客も増加、「China Travel」から「China Haul」へ
今回の人の移動で目立つのは、中国人旅行者だけではない。街中では外国人観光客の姿も増えている。オンライン旅行プラットフォームのデータによると、珠海や温州を訪れる外国人旅客は前年同期に比べて約3倍に増加。義烏、ラサ、昆明、宜昌などへの外国人旅行者も倍増しているという。
SNSでは「China Travel」に続いて、「China Haul」という新しい旅行関連ワードも登場している。中国を訪れた外国人が、現地で購入した商品やショッピング体験を紹介する動きも広がっており、訪中観光と消費が一体化しつつある。
今年1~7月の中国国内における外国人消費額は、前年同期比27.8%増。インバウンド観光は、単なる観光需要ではなく、中国経済を支える新たな消費市場として存在感を高めている。
中国で動いているのは人だけではない。国家郵政局の統計によると、9月29日時点で2026年の全国宅配便取扱量は1,500億件を突破。前年より12日早く、この水準に到達した。人が都市から都市へ移動し、観光客が地方へ向かい、商品が宅配便で全国を駆け巡る。こうした「人の流れ」「モノの流れ」「お金の流れ」が重なり合うことで、中国各地の消費の熱気が生まれている。
国慶節の大型連休は、単なる「休暇」ではない。旅行、交通、外食、宿泊、レンタカー、ショッピング、宅配――。あらゆる分野の需要が一斉に動くため、連休期間は中国経済の現在地を映し出す一種の「健康診断」ともいえる。
1日3億人が移動する中国。
その巨大な「人流」の先に、観光消費の拡大、地方経済の活性化、EVの普及、そしてインバウンド需要の回復が見えている。今年の国慶節は、中国経済の「今」を体感できる、まさに巨大なリアルタイム経済指標となりそうだ。
(中国経済新聞)
