ピンドゥオドゥオ、雄安に本格定着 5,000人規模のデジタル拠点で「未来都市」に新たな力

2026/10/1 08:30

中国の電子商取引大手、拼多多(ピンドゥオドゥオ)は9月23日、河北省雄安新区に設立した現地法人の年間採用計画を前倒しで達成し、5,000人規模の人員体制を整えたと発表した。

本社オフィスの取得、雄安新区との戦略的協力協定の締結、現地チームの立ち上げ、事業の本格稼働――。同社は今年5月末以降、わずか4カ月ほどで雄安への進出を急速に進めてきた。単なる拠点設置にとどまらず、オフィスなどの資産取得を含む「重資産型」の投資を進めることで、雄安に長期的に根を下ろす姿勢を鮮明にしている。

今回の進出は、民間の大手インターネット企業が自らの事業戦略と雄安新区のデジタル経済発展を結びつける動きとして注目される。

ピンドゥオドゥオの雄安プロジェクトが動き始めたのは5月末だった。当初は10人余りの小規模な立ち上げチームからスタートしたが、6月15日には最初の150人が正式入社。翌16日には、河北省委員会常務委員で雄安新区党工委書記兼管理委員会主任の張国華氏と、拼多多グループ執行総裁の朱政氏らが会談し、双方が「デジタルサービス戦略協力枠組み協定」に署名した。

同月、ピンドゥオドゥオ信息技術服務(雄安)有限公司が設立され、初期資本金として5億元を投入。さらに6月21日には、中国電建と契約を締結し、地上12階建てのオフィスビル1棟を取得した。雄安新区でオフィスビルを取得したインターネット企業としては初めてとされる。

そして9月23日、年間計画として掲げていた5,000人の直接雇用をすべて完了した。わずか3カ月余りで計画を前倒し達成したことで、ピンドゥオドゥオは雄安における事業展開を一気に加速させた。

同社によると、雄安法人はグループ全体のデジタルサービス拠点として位置づけられ、プラットフォームのエコシステム管理、データ処理・分析、伝統産業の高度化、クラウドプラットフォームサービスなどを重点的に展開する。特に「伝統産業データ処理サービスセンター」と「伝統製造業の高品質発展総合サービスセンター」の2つを軸に、デジタル技術を活用した産業支援を進める方針だ。

雄安での5,000人規模の雇用創出は、単なる人員拡大ではない。現地ではすでに具体的なデジタルサービスが動き始めている。例えば、雄安チームの一つでは広告審査と出店者向けサービスを担当。広告審査では、AIなどの技術によって明らかな違反コンテンツを先に選別し、判断が難しい案件を人が確認する「技術+人」の仕組みを採用している。人による審査結果は再びモデルの学習に利用され、システムの改善につなげられる。

また、最近では河北省をはじめとする伝統的なアパレル産業のデジタル化を支援する「試着ミラー」と呼ばれる新たなプロジェクトも立ち上がった。

このプロジェクトでは、データモデルを活用してアパレル商品のページ上でアルゴリズムによるタグ付けを行い、動画や動画像を生成することで、消費者がモデルの着用イメージをよりリアルに確認できるようにする。

狙いは、アパレル商品の販売転換率を高めるとともに、オンライン販売で課題となっている返品率の高さを改善することだ。現在はユーザーテストの段階にあり、今後、河北省から全国のアパレル事業者へ対象を拡大していく計画という。

このほか、雄安のデータ処理サービスセンターでは、アルゴリズムのタグ付けやモデル学習用のデータベースが構築され、検索・レコメンドの改善、画像から動画を生成する技術の訓練など、さまざまな業務が進められている。

伝統製造業向けの総合サービスセンターでは、「ガバナンス」「品質検査」「コンプライアンス」「アフターサービス」などを一体化したサービスの提供を目指す。

河北の産業集積地を結ぶ「デジタルサービス拠点」——ピンドゥオドゥオはこれまでも河北省で、電子商取引を通じた「デジタルと実体経済の融合」を進めてきた。例えば、滄州市青県では化粧筆メーカーが輸出向けOEM生産から国内市場へと事業を広げ、年間生産額が30億元に達したとされる。保定市安新県では、アルゴリズムによる推薦機能を活用してランニングシューズのブランド化を支援。石家荘市趙県では、特産品の雪花梨のオンライン販売量が約20%増加したという。

これまで河北各地の産業集積地が個別に取り組んできたオンライン化やデジタル化を、雄安の拠点が横断的につなぐ役割を担うことになる。つまり、ピンドゥオドゥオの雄安進出は「一つの企業や産業をデジタル化する」という単発的な支援から、「プラットフォーム+産業集積地+デジタルサービス」という仕組みを構築する段階へ移行しつつある。

5,000人のデジタル人材がデータ処理、アルゴリズム開発、クラウドサービスの運用などに携わることで、拼多多自身の事業だけでなく、周辺産業のデジタル化にも波及効果が生まれることが期待される。

ピンドゥオドゥオの事業戦略と雄安新区が目指す都市像には、デジタル技術を軸とするという共通点がある。雄安新区は、中国が「千年の大計、国家の大事」と位置づける国家戦略の一環として2017年に設立された。現在では5,300棟余りの建物が建設され、約500キロのデジタル道路が整備されるなど、都市インフラのデジタル化が進められている。5G、大規模データ、人工知能(AI)などの技術を都市建設や行政運営に取り込み、スマート交通やスマートコミュニティーなどの実証・応用も進んでいる。

雄安新区は現在、「雄安都市大脳」を中心に、デジタル基盤、スマート建設、スマート運営、シーン主導型の応用という4つの体系を組み合わせた「一中心・四体系」のスマートシティー構想を推進している。

こうした環境において、データ処理やクラウドサービス、産業デジタル化を得意とする拼多多が大規模な人材と資本を投入することは、雄安のデジタル産業集積をさらに厚くする可能性がある。

これまで雄安新区への進出企業は国有企業の本社などが中心だった。そこに大手インターネット企業であるピンドゥオドゥオが加わることで、雄安のデジタル産業の企業構成にも変化が生じつつある。

中国数実融合50人フォーラムの副秘書長を務める胡麒牧氏は、ピンドゥオドゥオが雄安を京津冀地域における重要なデジタル拠点と位置づけていると分析する。大規模なデジタル人材の集積は、人材の雄安への移動を促すだけでなく、デジタル経済、産業エコシステム、技術応用の各分野に影響を与える可能性があるとの見方を示している。

ピンドゥオドゥオ側も、雄安への進出について単純な事業拡大ではなく、国家戦略に積極的に参加する企業としての取り組みだと説明している。今後は大規模データ処理、デジタル運用、クラウドプラットフォームなどの分野で事業を拡大し、サプライチェーンの川上・川下に位置する企業や関連資源を雄安へ呼び込むことを目指す。

国家戦略として整備が進む雄安新区と、デジタル技術を成長の柱とする民間企業。両者の接点が広がることで、雄安が目指す「未来都市」の産業基盤に、民間のデジタルサービスがどのように組み込まれていくのか。ピンドゥオドゥオの今後の事業展開は、雄安のデジタル経済の成長を占う一つの事例としても注目されそうだ。

(中国経済新聞)