中国「空飛ぶ経済圏」が本格始動 eVTOL実用化と海外展開が加速

2026/07/30 12:30

中国・上海でこのほど、「2026国際低空経済博覧会」が閉幕した。改正「中華人民共和国民用航空法」の施行後初となる低空経済分野の大型イベントで、65の国・地域から延べ6万6,400人が来場した。「新製品」「耐空証明」「国際化」が今回のキーワードとなり、中国の低空経済産業が研究開発・製造段階から実用化・事業化へ移行しつつあることを印象付けた。

会期中は低空産業の商談も活発に行われた。4日間の会期で展示面積は6万平方メートルに達し、国内外452社が出展。eVTOL(電動垂直離着陸機)51機を含む570機の新型航空機(模型含む)が展示され、専門フォーラムやロードショー、一般参加型イベントなど85件が開催された。

会場では産業チェーンや投融資分野での提携も相次いだ。中航民機機載系統有限公司は自社開発の中核製品14種類を発表するとともに、10件以上の戦略提携・製品引き渡し契約を締結した。沃蘭特(Volant)は国内外から260機の受注を獲得し、世界研究開発本部の設立や低空産業投資基金の創設も発表。沃飛長空は新型「AE200」の試作機を初公開し、機体追加購入契約を締結した。

また、峰飛航空は順豊(SFエクスプレス)と低空物流分野での包括提携に合意。時的科技は世界本社と製造拠点を上海市閔行区に設置すると発表した。藍色向量(SKYLA)は新世代ティルトローター式eVTOL「SKYLA V30」を世界初公開し、約100機の予約販売契約を締結。覧翌航空は230機の追加受注を獲得し、美団(Meituan)のドローン事業も初日だけで500社の商談を行った。

低空経済関連の人材需要も急拡大している。求人サイト「猟聘(Liepin)」が公表した報告によると、2025年7月から2026年6月までの1年間で、低空経済分野の新規求人は前年同期比67.64%増加した。分野別では、インフラ・サービスが90.06%増、運航サービスが72.71%増、関連サービスが73.07%増、製造業が60.34%増となった。一方、求職者数の伸びは14.13%にとどまり、人材需要が供給を大きく上回っている。

業界関係者は、人材不足というよりも「人材構造の転換」が進んでいると指摘する。従来は航空機を製造できる技術者が求められていたが、今後は技術やエンジニアリングと実際の運航・産業利用を結び付けられる人材への需要が高まるとの見方を示している。

博覧会では「安全がすべての前提」との認識が業界全体で共有されたことも特徴だった。上海特金の姜化京董事長は、低空経済が「研究開発・製造」から「実用化」へ本格的に移行し、低空安全や監視・探知システムが重要分野として急速に存在感を高めていると述べた。

時的科技の徐安副総裁も、低空経済は技術実証段階から産業化加速段階へ移行しており、機体開発だけでなく、コア部品、試験・認証、運航サービス、インフラ整備まで含めた産業エコシステム全体の構築が重要になっているとの認識を示した。

また、多くのeVTOL機体で耐空証明取得に向けた取り組みも進展している。御風未来は貨物機「M1B」の耐空認証取得を2027年に予定しているほか、6人乗り有人機は2026年末の完成・公開を目指す。時的科技は航空用電動エンジン「AEE25」が耐空認証段階に入り、「E20」eVTOLも2027年第4四半期の型式証明取得を目標としている。

峰飛航空では貨物機「V2000CG」が6月に海外向けeVTOL耐空証明を取得し、有人機「V2000EM」も認証手続きを進めている。さらに、中国民用航空局は世界初となる5トンクラスeVTOL「V5000CGH」(最大離陸重量5,700キログラム)の耐空申請を正式に受理した。

海外市場の開拓も加速している。博覧会では20カ国以上から45社のバイヤーが参加し、中国企業70社との間で296件の商談を実施。意向契約額は1億ドル(約160億円、1ドル=160円換算)を超え、機体本体や飛行制御システム、点検ソリューション、都市型エアモビリティ(UAM)など幅広い分野で商談が成立した。

沃蘭特はインドネシアの大手ヘリコプター運航会社などと契約を締結し、現在の受注の約3分の1が海外市場からとなっている。重点市場は東南アジア、中東、欧州の順で、特に東南アジアを最重要市場と位置付ける。

時的科技もインドネシア企業との協力を通じて、現地での空中交通システムや運航モデルの構築を進める方針だ。峰飛航空は、飛行実証を経てアラブ首長国連邦(UAE)のファルコン・アビエーション・サービスから50機を受注し、アブダビ国営石油会社向けの資材輸送や人員輸送に活用される予定となっている。また、インドネシアで耐空証明を取得したことを受け、現地企業との協議も進んでいる。

業界では、中国の低空経済は製品輸出からシステムソリューション輸出へと発展しつつあるとの見方が広がる一方、研究開発や耐空認証、海外市場開拓など、産業はなお発展初期段階にあり、今後の成長には継続的な投資と長期的な視点が必要との認識で一致している。

(中国経済新聞)