中国の6G発展ロードマップが明確に 鍵は「融合」と「革新」

2025/11/14 13:30

11月13日に開幕した「2025年6G発展大会」で、中国の6G推進が技術革新の加速期に入り、産業ビジョンもより鮮明になってきたことが示された。通信行政、標準化機関、国際組織の専門家らが、6Gの発展を支える要点と将来像を描き出した。

通信から“知能”へ 6Gがもたらす新たなインフラ

工業・情報化部の張雲明(チャン・ユンミン)副部長はあいさつで、6Gを「次世代の知能型・総合デジタルインフラ」と位置づけた。通信に加え、AI(人工知能)やセンシング、計算、安全との融合が進むことで、新たな生産力を生み、経済・社会の質の向上に寄与すると述べた。

同部によると、6Gの基盤となる主要技術やネットワーク構造、システム設計の研究が体系的に進められ、300項目以上の技術が蓄積された。本大会では、「6G・AIネイティブ設計アーキテクチャ」「端末側エージェント通信技術の要件」などの研究報告が多数発表され、超大規模アンテナの試作機や“センシング×知能融合”のデモシステムといったコンセプトモデルも公開された。

張氏は「基礎研究と学際融合こそが、原始的な革新を生み出す源泉だ」と指摘。通信とAI、衛星インターネットなどとの横断的な連携を深め、人や機械、モノ、エージェントをつなぐ新たなネットワークを構築していく必要性を強調した。

6G×AIが切り開く“インテリジェント端末”の時代

中国工程院の邬賀銓(ウー・ホーチュアン)院士は、6GとAIの深い融合によって端末の新時代が幕を開けると述べた。AIスマートフォンやエージェント型端末、AI対応眼鏡、AIと拡張現実(XR)を組み合わせたデバイスなどが今後の主要分野になると見込む。

「AIとXRが融合することで、これまでにない自然で没入感のある操作体験が生まれ、6Gの重要な推進力になる」と語り、端末の革新が新たな6Gエコシステム構築の起点になると指摘した。

ITU・3GPPと歩調合わせ国際標準化でも存在感

国際電気通信連合(ITU)が2023年に示した6つのアプリケーション領域は、世界の6G開発の方向性を定める指針となっている。また、通信規格の策定を担う3GPPでも、6Gのビジョンや技術ルート、ネットワーク設計などの議論が進み、標準化のスケジュールが固まりつつある。

中国通信標準化協会の聞庫(ウェン・クー)理事長は、中国が重点的に取り組む領域として「端末進化」「通信と知能の融合」「衛星と地上網の一体化(星地融合)」の3分野を挙げた。

端末進化:スマートフォン依存から、多形態・ウェアラブルへと拡大。車載端末は“移動型無線ハブ”へ

通信×知能の融合:ネットワークが“運ぶだけ”から“自ら判断する知能ネットワーク”へ進化

衛星×地上網の一体化:地上通信のカバー限界を突破し、全球的なシームレス接続を実現

商用化は2030年頃から本格化 2040年には50億接続へ

GSMA(世界移動通信事業者協会)大中華区の斯寒(スー・ハン)総裁は、6Gの商用化が2030年頃に中国、欧州、米国などで始まり、2040年には全球の6G接続数が50億を超え、全体の半分を占める可能性があると述べた。

また、6Gへの移行を以下の2段階に整理した。

まず5Gの能力を最大限に引き出す

 5Gネットワークを安定させ、社会全体での活用を拡大することが前提。

その上で自然な流れとして6Gへ移行

 5Gの価値が十分に発揮されれば、6Gへの進化は“自然な延長線上”で起きる。

“万物が知能でつながる”社会へ向けて

中国情報通信研究院の王志勤(ワン・ジーチン)副院長は、「AIの進化速度は想像を超えており、6Gとの融合が次の飛躍を生む」と指摘。通信・知能・計算・データ・センシングを中心とした6G研究をさらに深化させ、産業の新たなエコシステム構築を支えていく方針を示した。

(中国経済新聞)