「一寸先は闇だ…」
永く政界で語られてきた「警句」である。この間、日本の政局は目まぐるしく動いた。改めてこの警句を痛感すると言えばそうだが、しかし、冷静に考えれば帰結はそれほど意外なものではない。
まず、自民党総裁選挙における高市早苗氏の勝利である。総裁選直前の大方の政治記者、メディアの予測は高市氏ではなく小泉進次郎氏の勝利というものであった。しかし、4日の総裁選の投開票の中継を注視しながら「さもありなん」という感慨を抱いた。すなわち、現在の日本の世情を考えるなら、自民党の党員、党友の「空気感」が高市氏を押し上げるものになったとしても何の不思議もないものだったからである。その世情を一言で言うなら、中国への屈折した反感、対立感情が世を覆う「新暴支膺懲の時代」というべきものである。中国の台頭著しい時代に世界が大きく動き、新たな世界秩序への端緒がほのかに見える昨今、焦燥と抵抗感、そして根深い反発の感情が広く日本を覆う。よって、人々の感情が高市氏に振れるのも驚くことではない帰結だった。続く維新との「連立」も同様である。言うまでもないが筆者はそれを良しとするものではない。いま「高市的」なるものが席巻する社会の風潮を深く危惧する。日本は危ういところに立ち至っているという危機感を強くするのである。
