中国の大手スーパーマーケットチェーン、永輝超市(ヨンフイちょうし、Yonghui Superstores/上場コード:601933.SH)は10月13日、福建省福州で開催された「2025年永輝新品発表会」において、同社の経営改革および今後の戦略を発表した。
永輝超市のCEOであり全国調改(改革)責任者でもある王守誠(ワン・ショウチョン)氏は、「業界全体が激しい内巻(ないけん=過剰競争)に苦しんでおり、永輝も例外ではない」と率直に語った。
■ 店舗改革の成果と社員分配金
王氏によると、永輝は現在100店舗以上で調改(業態改革)を実施中であり、「品質の高い商品拡充を中心に、より低コストで合理的な価格体系を構築し、基盤設備への投資を強化する」と説明した。
2025年1~8月の期間において、永輝超市の社員への累計分配金は3,100万元(約6億6,000万円)を超え、延べ32,094人が受け取ったという。単月・単店舗あたりの最高分配額は30万元(約640万円)に達した。また、同社は技能認定制度を推進しており、8月末時点で4,665人が「技工認証」を取得している。

■ 4年連続赤字 232店舗を閉鎖
しかし、永輝超市の経営環境は厳しい。2024年の通期決算によると、売上高は675億7,400万元(約1兆4,400億円)で前年比14.07%減少、純損失は14億6,500万元(約310億円)と、4年連続の赤字となった。
会社側は「競争激化に対応するため、経営不振店舗の整理と戦略転換を進めた結果」と説明しており、2024年には全国で232店舗を閉鎖した。
さらに同社は、中国中部で高い顧客満足度を誇る地域スーパー「胖東来(パン・ドンライ)」の経営モデルを参考にした「胖東来式調改」も導入している。
■ 「商品中心」への転換 100の“億元級単品”を育成
永輝超市の副総裁でありチーフプロダクトオフィサーの佘咸平(シェ・シェンピン)氏は、「今後3年間で“商品中心化”への全面的な改革を進める」と述べた。
改革の柱として、200の戦略的パートナー企業との協業、100の“億元級単品”(年間販売額1億元=約2.1億円規模の商品)を重点育成する目標を掲げる。
さらに「永輝定制(ヨンフイ専用モデル)」や「大牌尖貨(人気ブランドの目玉商品)」などを展開し、取引先には「無チャンネル手数料・無支払い遅延・無独占的取引」を約束する。
■ 胖東来モデルは全国展開に適用可能か
業界関係者の中には、「胖東来は地方型スーパーであり、そのモデルを全国チェーンの永輝に適用できるのか」と疑問を呈する声もある。これに対し佘氏は、「理念や顧客体験の部分は積極的に学ぶが、地域特性に応じた商品戦略を構築する」と説明した。

胖東来モデル
■ 業界全体に広がる“調改ブーム”
小売業界では、永輝だけでなく他社も同様に改革を進めている。湖南省の「步步高(ブーブーガオ)」はすでに店舗改装を実施、大潤発(ダーランファ、RT-Mart)は同日「自有ブランド節」を開催し、工場直結・中間業者の排除・ブランドマージン削減などを打ち出した。
こうした動きは、中国の小売競争が「出店拡大」から「商品・サプライチェーン競争」へと本格的にシフトしたことを示している。今後、消費者の支持を得るには、価格だけでなく、商品力とサービス力の総合的な向上が問われることになりそうだ。
(中国経済新聞)