2024年、中国経済の明と暗

2025/01/1 08:30

中国で12月11日から12日にかけ、年の一度の経済活動に関する会議が行われ、座長を務めた共産党中央の習近平総書記が演説を行った。2024年の経済活動をとりまとめ、現在の情勢を分析し、2025年の活動指針を示している。

この会議で、2024年の中国経済をどのように評価したか。

発表されたコミュニケによると、経済はおおむねV字回復の傾向にあり、1月から9月の四半期別に見たGDPの前年比成長率は順に5.3%、4.7%、4.6%であった。さらに10~12月は5%前後にまで回復し、年間では4.9%となり、「5%前後」という当初の目標にほぼ近くなると予想している。ただし、課題も多分に存在する。具体的には、

一、国際的な環境の変化による悪影響が深刻化。

二、国内需要の不振。

三、経営困難に陥る企業が出ている。

四、雇用や所得が思うように伸びない。

五、依然としてかなりのリスクをはらんでいる。

の五点である。

中国政府は、すでに掲げたGDP成長率5%という目標の達成に自信を示してはいるが、国民の実感と政府の実感にはかなりの温度差があり、その差が特に顕著なのは消費の伸び悩みである。スーパーに人がおらず、デパートも倒産し、飲食店の1人あたり消費額はコロナ禍前の半分に減り、海外の有名ブランド店が北京や上海などから撤退し始めている。

国家統計局および北京や上海の統計局による一般消費財の小売り総額のデータを見ると、11月は中国全体で前年比1.8ポイント減の3.0%であり、1—11月の累計では前年同期比プラス3.5%であった。一方、北京や上海を見ると、11月は北京では14.8ポイント減って-14.1%、上海は24.4ポイント減って-13.5%となり、ともに前年割れに転じた。1—11月の合計も、北京が-2.8%、上海が-3.1%で、ともに悪化し中国全体の平均値を大幅に下回っている。

これらを業種別に見ると、北京は11月、飲食業の売上高は減少幅が4.2%に縮小したが、このうちネットでの販売も含めた小売り総額はそれまでの1.4%増からマイナス14.9%に転じた。また自動車や文化・オフィス用品などの小売り額も低下傾向にある。

上海市は、商品の小売りや飲食業の売上に関する具体的な数字を発表していない。小売り総額を用途別に分けると、11月は「利用するもの」が30ポイント以上の落ち込みとなるマイナス20.3%、「身に着けるもの」は20ポイント下がって7.4%減であった。北京もほぼ同じような傾向で、「利用するもの」が前年比17.0%減、「身に着けるもの」が同じく2.1%減となっている。

2024年は、「中国のハワイ」と呼ばれる海南島で、海口や三亜など有名観光都市の小売り品の販売額が引き続き前年割れとなった。観光客の大幅な減少や免税品販売の伸び悩みなどが原因とみられる。

以上のデータから、2024年の中国経済について、一般消費財の販売額に代表される消費が引き続き弱含みで、中でも一線城市である北京や上海で一段と減速していることが分かる。月間ベースで見ても前年割れの傾向が見え、中でも11月は両都市とも前年より10%以上も悪化している。この理由として、個人所得の低下や「独身の日セール」の前倒し実施などといったことのほか、現地の企業や市民の転出といった特殊な事情も影響したかと見られる。

中国経済に関するメディア「財新網」によると、北京や上海で一般消費財が売れなくなっている大きな理由は、ここ数年、外資系企業の中国撤退が相次いでいることで、当初の住人だった高所得者層も転出し、消費が伸びなくなったものと見ている。このような傾向はそれまでも見られていたが、2024年にそれが顕在化した。上海や北京は外国企業の幹部が特に多いので、こうした流れによる影響度は二、三線の都市より強くなる。

また、野村中国の首席エコノミストである陸挺氏は、「一般的に言えば、購買力は若者の方が高齢者より高い。ただ景気が冷え込むと大都市で雇用が減り、改めて人の移動が進む。つまり、活躍の場を求める若者たちが北京や上海や広州から去っている」と分析している。また、経済の下押しに金融関連の汚職取り締まりなども加わって高級飲食店がかなり不況になったことも、北京や上海での消費の落ち込みの理由であるという。

2024年の中国経済について、一般消費の低迷のほか、以下二点の問題が見られた。

一,法人消費の落ち込み

社会全体の消費額のほぼ半分を占める政府や企業といった法人による消費について、個人消費の低迷により企業の売上や利益が伸びず、企業側がコストダウンに走り、オフィス関連や出張などの出費を抑えている。2024年1—10月、中国全体の文化・オフィス用品の小売り総額は前年同期比-0.6%であった。また飲食関連の売上高は、北京が前年同期比-5.2%、上海が同じく-5.6%であり、企業による宴席が減ったこともその理由の一部である。

二, 地方政府の財政緊縮によるインフラ投資の抑制や公共発注、公共サービス業の発展への影響。

地方政府は、基本的生活や賃金を確保し、出費を抑えるために、歳出削減を進めている一方、公務員の給与や福利厚生費も抑えていることで、公務員の消費意欲や公共サービス業の成長に支障が出ている。

中国では今、消費市場の低迷が、不動産市場に次ぐ経済後退の大きな原因と見られている。

年の瀬を迎えた中、今度の経済会議では2025年の目標について、今回は例年の四大目標(経済成長、雇用の確保、物価の安定、国際収支バランス)に加えて「個人所得の増加」を強調している。国民に一段と実感をもたらすことを重視する中国政府の姿勢の表れである。

経済政策の基本線は、「より積極的に」といったものであり、財政政策は「積極的」から「さらに積極的」へ、通貨政策は「穏健」から「適度な緩和」へ、「国内需要の拡大に重点」から「国内需要のトータル的な拡大」へと示された。引き続き経済を回復させること、また市場の期待感や見通しを明るくすること、という中国政府の決意が十分に反映されている。

2025年の経済成長目標は、やはり5.0%前後とみられる。2035年に1人あたりGDPを倍増という目標を果たすには年間成長率を4.6%以上とする必要があるからである。

この目標の達成に向け、2025年はGDPに占める政府の財政赤字額の割合を4.0%-4.5%に引き上げるだろう。また政府は、従来型のインフラや人に関わるインフラ(教育、医療、高齢化対策)、国民生活に費やすための2-3兆元の特別国債を別途発行すると見られる。地方特別債の発行額は4.5兆元に達するだろう。

2025年は北京や上海、深センで不動産の購入制限が完全撤廃され、全国民が物件を買えるようになることで、不動産市場や内需が大きく回復するだろう、との見方も出ている。

ただし、今後に対する国民の期待感を引き上げること、これが中国の消費市場回復を左右するキーポイントとなっている。

(中国経済新聞)