今年の中国GDP成長率は5%の見込み

2022/04/26 15:24

厳しいコロナ禍の中、2022年、中国の経済動向やGDPの成長率について、中国人が関心を示しているほか、世界各国からも心配の声が上がっている。

中国国家統計局は4月18日、主要経済指標を発表しました。1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比+4.8%と、市場予想の+4.2%を上回り、前期の+4.0%から伸び率が拡大した。

ただし、GDP成長率は、新型コロナウイルスの感染抑制に向けたゼロコロナ政策に伴う事実上のロックダウン(都市封鎖)の影響が十分に反映されていないとみられます。同時に発表された3月の小売売上高や鉱工業生産は足元の景気減速を示している。

 去年の中国経済は、低調だった2020年から比べるとかなり上向いて、GDPの年間成長率は「8%」との目標に到達した。今年3月の全人代で、李総理は2022年のGDP成長率は5.5%を目標した。

 しかし、市場調査機関では楽観を許さないとの見方が出ており、世界銀行の最新のレポートでは、去年の成長率が8%、今年は5・1%に落ち込むと見ている。先ごろ行われた政府経済活動会議で、「需要が縮小し、供給が行き詰まり、落ち込む様相」との評価が下された。これについてシンクタンクの安邦(ANBOUND)は、経済動向全般が楽観視できず、去年の第四四半期や今年の上半期の状況から、下り坂が続くことへの手はずを打つ必要があると見ているのではないか、と分析している。

 去年の第四四半期で言うと、局地的ではあるが間断なく続く新型コロナウイルスの発生による経済活動への影響は無視できない上、不動産について、債務不履行に陥る会社が現れて市場が大きく後退したことが、かなりのダメージをもたらしている。さらに、原材料価格の上昇や世界的なサプライチェーンのゆがみなどもマイナス要因となっている。中国は輸出が増え、工業も急速に回復しているが、コロナの影響で国内消費が息を吹き返していない。去年11月現在の一般商品の小売売上高であるが、2年間平均で4・4%の伸び、物価の変動要因を除いた実質伸び率はわずか0・5%であった。投資も同じような状態で、1~11月の固定資産投資額は前年同期比5・2%増にとどまっている。去年、第三四半期に4・9%だった経済成長率は、第四四半期は4%以下に落ちると見られている。

 さらに心配なのは、この下り坂が今年の第一四半期も続くと見られていることである。今年はつまり、経済規模は膨らんでいくが、成長についてはいい数字が期待できない。その短期的な要因はやはりコロナのぶり返しであり、変異体のオミクロンの侵入で感染者が増加傾向にある。陝西省西安はで収束が見られず、河南省や天津、深センなどでも相次いで感染例が発生している。中国は厳しい「ゼロコロナ」政策を講じている故に、今年第一四半期はかなりの影響を受けることになった。

 特に、かき入れ時となる恒例の春節を前に、多くの地域で帰省の自粛が求められており、観光業や宿泊業、飲食や文化などといったサービス業が苦境に置かれる。さらに、北京で行われる冬季五輪についても、厳しい感染対策が講じられるために「オリンピック効果」はほぼ望めず、むしろ地域の経済活動に支障が出て、成長の足を引っ張ることになりそうである。

中国では去年、不動産業界が融資難に陥り、投資も落ち込む一方であった。今でも金融機関は融資について慎重な姿勢である。よって今年も、不動産が経済成長に貢献する可能性は薄く、特に第一四半期は引き続き低空飛行をたどり、経済全体の足を引っ張って行くことになるだろう。

 まとめて言うと、今年の中国経済はより重圧を背負うことになる。

 今年の経済動向を四半期ごとに見ると、「しり上がり」となるだろう。財政援助に支えられたインフラ建設が経済を支えるという形が目に見えてくるほか、不動産市場も下半期にはある程度の改善が期待される。コロナがこの3か月で抑制されれば、経済全体も第一、第二四半期には落ち着きを取り戻せるとも見られる。ただし、逆に上半期に形成を挽回できずに落ち込み続けるようであれば、国際的な環境が変わり、アメリカFRBの通貨引き締め政策を経て、中国経済はさらに厳しい局面に置かれてしまう。

 USB銀行は、今年の中国経済の成長率をおおむね5%以上と見ているが、厳しいコロナ政策が長引くようであれば、不動産活動の落ち込み幅が予想以上となり、成長率は4%程度となるという。

野村証券のエコノミスト・陸挺氏によると、コロナ対策がこのまま続けば小売業やサービス業が一段と苦しくなり、物価の変動を除いた一般商品の小売売上高は前年比割れもあり得るとし、「第一四半期は4・2%、年間では5・2%」という大方の予測値は甘すぎる、と見ている。よって野村は、第一四半期は前年同期比2・9%プラス、年間では4・3%プラスとみているほか、上半期についてはかなりの下振れリスクがある、と見ている。

 しかし、HSBCホールディングスが1月13日に発表した、全世界の企業に対するアンケート結果を見ると、中国企業の6割以上が今年の成長に自信を持っているとのことである。

 この「匯豊商貿領航」とよばれるアンケートは、去年の第四四半期に、世界14の地域で、中国企業526社も含めて計7352社を対象に実施したものである。

 中国企業は、新型コロナウイルスのぶり返しや世界経済の回復が見通せないなどといった状況の中、経済政策の実施などといった追い風もあり、今年の業務に自信を持っており、成長が望めると答えた企業が66%に達している。その一方で、各社とも課題に前向きに対応しており、消費者のニーズの変化に合わせて主な業務や製品を見直している企業がおよそ4割、また新たな市場を開拓する予定との企業が4割以上に達している。

 中国経済は現在、重点を「量」から「質」へ移している。不動産市場のコントロールやIT企業への規制などを経た今、経済政策を定めるには新たな成長点を見出す必要がある。それは、産業の進歩や成長に沿ったものであること、製造業の国際競争力を引き上げられること、資金の「貯水池」となれるだけのスケールを有すること、という三つの条件を満たすものである。難易度は推して知るべきである。(中経 速水静)