上海の街角にAI、市民の暮らしへ広がる新たなテクノロジー

2026/10/3 08:30

2026年10月1日、中国の国慶節(建国記念日)連休初日。上海市静安区の永源路で、AIをテーマにした「智在発声・AI市」が開かれ、多くの市民や観光客でにぎわった。

会場となった道路は一時通行止めとなり、車両は迂回。20社を超える中国のテクノロジー企業が集まり、人工知能(AI)を活用したさまざまな製品を展示した。国慶節の街角に、最新テクノロジーを気軽に体験できる空間が登場した格好だ。

会場には、ヘルスケアや医療、ヒューマノイドなどのロボット、AIによる「スマート伴侶(パートナー)」、電子アルバム、AIスマートグラスなど、幅広い製品が並んだ。

来場者の年齢や背景もさまざまだった。高齢者が健康関連の製品について説明を受ける一方、外国人観光客はロボットと記念撮影。子どもたちはキャラクターを模した「スマート伴侶」と楽しそうに触れ合い、写真家は映像と音声を組み合わせた電子アルバムに関心を示していた。若者の間ではAIスマートグラスを試す姿も目立った。

家族とともに上海に移り住み、普段は自宅で子どもの世話をしているという趙さんは、この日、子どもに誘われて会場を訪れた。さまざまな製品を体験し、「こんなものがあるとは知らなかった。勉強になったよ」と笑顔を見せた。

子どもたちの人気を集めていたのが、キャラクターのような外見をした「スマート伴侶」だ。中国語にまだ慣れていない子どもたちも、その周りに集まり、興味深そうに話しかけていた。

スタッフによると、この製品の特徴は、一般的なAIアシスタントとは異なり、「感情面での寄り添い」を重視していることだという。会話に合わせて目が動く仕組みも備えている。

「子どもは親に何でも話すわけではありません。学校から帰ってきたら、まず『スマート伴侶』と話して、気持ちを打ち明けることもあります」。スタッフはそう説明する。

AIスマートグラスを記者が体験

会場ではAIスマートグラスも注目を集めた。記者が実際に装着して会場を撮影してみると、専用アプリと連携することで、地図によるナビゲーション、音声のリアルタイム字幕、物体認識、多言語翻訳、写真撮影などの機能を利用できた。

装着すると、左側の視界に緑色の文字で会話内容が表示される。カメラの画角はかなり広く、一般的なカメラでいえば約17mm相当の広角レンズに近い。焦点距離は固定されており、ズーム機能はない。

暗い場所で撮影する際には、シャッターを押した後に大きく動かないことが重要だ。撮影が完了する前に姿勢を変えると、画像がぼやけたり、画質が低下したりする場合があるという。

一方、適切な条件で撮影すれば、取材現場でも十分に使える画質を確保できる。実際に試した記者にとっても、撮影と情報収集を同時に行える実用性が感じられる製品だった。

AIは「未来の技術」から身近な存在へ

健康相談やコミュニケーション、翻訳、画像認識、さらには一人称視点での撮影まで、AIを活用した製品は少しずつ私たちの生活に入り込んでいる。

今回のAI市で印象的だったのは、AI製品を体験する人々の幅広さだ。高齢者から子ども、若者、外国人観光客、写真家まで、それぞれ異なる目的でAIに触れていた。

AIの活用シーンが広がるにつれ、利用する人の層も多様になっている。国慶節の街角で開かれた今回のAI市は、人工知能が企業や研究機関だけのものではなく、日常生活の中へどのように入り込んでいるのかを知る一つの機会となった。

静安区では今回、初めて開催された「新南西国際テクノロジー・カルチャー・ファッションウイーク」を通じて、南京西路約2.3キロを、テクノロジーと文化を「見て、体験して、楽しめる」街へと変えていく取り組みを進めている。

国慶節の街角を彩ったAI市。そこには、AIがより身近な存在となり、その利用者も年齢や国籍を問わず広がりつつある現状が映し出されていた。

(中国経済新聞)