海外で存在感を増す月餅 国内市場低迷のなか輸出が急成長

2025/10/1 07:30

中秋節の定番菓子である月餅(げっぺい)。近年、中国国内市場が縮小傾向にある一方、海外での需要が急速に拡大している。中国各地の海関(税関)データによれば、2025年1月から8月にかけて月餅の輸出量・輸出額はいずれも大幅に増加し、海外市場での存在感を高めつつある。

杭州海関の管轄地域では輸出量が46.25トンと前年同期比2.5倍に達した。雲南省からは7,520トン、1億3,000万元相当がシンガポールやマレーシアなどへ出荷され、広州からの輸出額は4,600万元を超えた。老舗の稲香村集団(スージョウ稲香村)は輸出が前年比21%増と好調で、その海外事業における月餅の割合は「半分以上」に及び、国内市場を上回る成長を示した。杭州の知味観(ちみかん)も12.8%増加している。

海外のECプラットフォームでは、稲香村や陶陶居(とうとうきょ)といった有名ブランドの月餅ギフトボックスが30~120ドルで販売されており、中国国内価格の数倍に相当する。三層の豪華セットは約60ドルで取引される例もある。稲香村海外事業部の董克志(とう・こくし)総監は「購入層は華人に限らず、現地住民にも広がっている。地域によっては蘇式月餅が日常のデザートとして受け入れられている」と話す。

輸出拡大の背景には、各企業が海外消費者の嗜好に合わせた商品開発を進めていることがある。低糖、無添加のほか、熱帯フルーツやミックスナッツ、ヨーグルトチーズなど現地の味覚に寄せた新フレーバーを展開。加えて、パッケージや販促に中国文化を取り入れることで、「文化的なギフト」としての価値を高め、非華人層の関心を引き寄せている。

一方で、京東(JD.com)の「2025年月餅トレンド洞察報告」によると、国内市場では月餅の需要が健康志向や軽量ギフト、スナック化へとシフトしている。73%の消費者が「成分の健康性」を重視しており、稲香村や知味観、広州酒家なども低糖・健康型商品を強化している。

輸出が好調な一方、国内市場の低迷は顕著だ。ニールセンIQのデータでは、2022年から2024年にかけて近代小売チャネルにおける月餅販売額は3年連続で減少し、2024年は29.6億元と前年から14.3%減少した。広州酒家の海外売上高は2024年に41.6%伸びたものの、全体収入に占める割合はわずか4.6%にとどまっている。

業界関係者は「出海(海外進出)」には依然として課題があると指摘する。各国で異なる食品規制や添加物・保存期間・包装基準への対応が必要であり、さらに欧米のスイーツ市場で定着するには、味覚や文化的背景を現地消費者に理解してもらう工夫が欠かせない。

月餅は今や「懐かしさを求める華人の食品」から「国際市場に挑戦する文化菓子」へと姿を変えつつある。ただし、輸出拡大が国内市場の縮小をすぐに補うのは難しい。伝統的な魅力を保ちつつ、健康志向やグローバルな味覚に柔軟に対応できるかどうかが、今後の世界市場での立ち位置を左右するとみられる。

(中国経済新聞)