金価格が急騰 現物一時3,470ドル突破、4月以来の高値に

2025/09/1 12:27

8月の国際金市場は大きく上昇した。現物価格は一時1オンス=3,470ドルを突破し、4月末以来の高値を記録。ニューヨーク商品取引所の金先物主力契約も月間で5%超の上昇となり、今年4月以来の最良のパフォーマンスとなった。

米銀アナリストによれば、金価格を押し上げた主因は二つある。ひとつは米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ観測が強まったこと。もうひとつは、FRB理事の更迭をめぐる政治的混乱が、ドル資産に対する投資家の信頼を揺るがしたことだ。

8月22日、パウエルFRB議長はジャクソンホールでの講演で、米国の労働市場にリスクがあると指摘。インフレ再上昇の可能性が残る中でも「利下げに前向き」であることを示唆した。これを受けて市場では9月利下げ観測が急速に高まった。

実際、米国の雇用指標は予想を下回っている。7月の非農業部門雇用者数は7.3万人増にとどまり、11万人増の市場予想を大きく下回った。インベスコの趙耀庭(チョウ・ヤオティン)氏は「FRBはインフレよりも雇用の弱さを懸念している。パウエル議長は9月利下げに明言はしなかったが、そのハードルを下げた」と分析する。

さらに、8月29日に発表された米国7月のコアPCE(個人消費支出)価格指数は前年比2.9%上昇。公表直後、9月の25bp利下げ予想は確率85%から87%へと上昇し、年内に1~2回の利下げを見込む声も出ている。

利下げ観測が強まるとドル安が進みやすく、金とドルが逆相関の関係にあるため、金価格を押し上げる。また、利下げによって金の「保有コスト」が低下することも投資妙味を高める要因だ。

加えて、8月末にトランプ米大統領がFRB理事のクック氏を解任したことも波紋を広げた。中央銀行の独立性に対する疑念が浮上し、ドル資産の信頼感が揺らいだ結果、投資家は安全資産である金に資金をシフトさせた。

国際金融機関は金相場に強気の見通しを示す。UBS(スイス銀行)は2026年前半に3,700ドルを予想。米銀アナリストは同時期に4,000ドル到達の可能性を指摘する。

百達資産運用のチーフストラテジスト、ルカ・パオリーニ氏は「世界の主要中銀の4分の3以上が利下げ環境下にあり、金は依然として最優先の防御的資産」と強調する。

フィデリティのファンドマネジャー、イアン・サムソン氏も「債券が分散投資の役割を果たせない局面でも、金はインフレや緩和的な政策に対抗できる“究極の安全資産”であり、長期的な強気相場が続く可能性がある」と述べる。

世界金協会によると、2025年第2四半期の各国中央銀行による金購入量は一時的に減少したものの、依然として2010~2021年の平均を4割以上上回っている。今後12カ月も高水準が続く見通しであり、金の長期的な需要基盤は堅固だ。

(中国経済新聞)