中国アニメ映画『浪浪山小妖怪』、興行収入2位に躍進 

2025/08/12 07:30

8月2日に全国公開された中国アニメ映画『浪浪山小妖怪』が、先週(8月上旬)の興行収入ランキングで4.3億元(約86億円)を記録し、2位に輝いた。累計興行収入は5.68億元に達し、公開からわずか1週間余りで驚異的な成績を収めている。特に8月10日(日曜日)には、単日興行収入で『南京照相館』を抜き、初の単日首位を獲得した。この日の快挙に加え、先週の興行収入は公開初週比で231%増という大幅な伸びを見せ、市場での勢いを示している。

『浪浪山小妖怪』は、動画プラットフォームBilibiliで2023年初頭に配信されたアニメ短編集『中国奇谭』のスピンオフ作品である。『中国奇谭』は、豆瓣(中国のレビューサイト)で8.7という高評価を獲得し、2億3000万回以上の再生数を記録するなど大きな話題を呼んだ。同作の8つの短編のうち『小妖怪的夏天』を原案とする本作は、豆瓣で8.6の高評価を得ており、『南京照相館』と並ぶ好評を博している。

作品の魅力:底辺の小妖怪たちの“西遊記”。

『浪浪山小妖怪』は、小猪妖(豚の妖怪)、蛤蟆精(カエルの精霊)、黄鼠狼精(イタチの妖怪)、猩猩怪(ゴリラの妖怪)という4人の無名の小妖怪が、唐僧とその弟子たちに扮して“取経”の旅に出る物語だ。原作である『西遊記』を大胆にアレンジし、階級社会の底辺で生きる彼らの奮闘を描く。小猪妖は、浪浪山でコネを使って大王洞での仕事を得るも、なかなか出世できず、努力を通じて自らの価値を証明しようと奮闘する。この設定は、現代社会の労働者階級の苦悩や夢を投影したリアリズムが特徴で、観客に強い共感を呼んでいる。

物語はユーモアと感動を織り交ぜ、伝統的な中国画の美学と西洋の透視法や光影技法を融合したビジュアルで彩られている。監督の於水氏は、北京航空航天大学の新メディア芸術・デザイン学院アニメーション学科の主任であり、准教授としても活躍する人物だ。出品元の上海電影によると、本作は短編と並行して企画・開発され、総勢600人以上のスタッフが参加、1800以上のショットを制作した大規模プロジェクトである。

『浪浪山小妖怪』の成功は、単なる興行収入の数字にとどまらない。公開2日目で1億元を突破し、3日目には1.5億元、4日目には2億元に到達するなど、驚異的なペースで記録を更新している。ソーシャルメディア上では、「世上没有浪浪山,人人都在浪浪山(浪浪山はないが、誰もが浪浪山にいる)」というキャッチフレーズが話題となり、労働者の日常や夢を象徴する作品として共感を呼んでいる。あるXユーザーは、「この映画は20億元に達する可能性がある」と予測し、別のユーザーは「老若男女、個人でもカップルでも家族でも楽しめる夏休みの最適な一本」と絶賛した。

また、『黒神话:悟空』のゲームディレクターである馮驥氏や同作のクリエイター・楊奇氏が本作を高く評価。「入場時は笑い、鑑賞中は笑いと涙、退場後も笑顔が続く」とのコメントを寄せ、作品の感情的な訴求力を称賛した。馮氏は特に、物語が「公平と透明への素朴な願い」を理解し、「希望をしっかりと残している」と語り、社会的階級や不平等をテーマにしながらも前向きなメッセージを伝える点に共感を示した。

『浪浪山小妖怪』は、中国アニメーション業界の成長を象徴する作品でもある。過去10年間、中国アニメは夏の興行市場で存在感を増してきた。『哪吒之魔童降世』が全世界で159億元(約2200億円)の記録を打ち立てたのを皮切りに、2Dアニメーションの可能性が再評価されている。本作はIMAXでの上映を実現した初の国産2Dアニメ映画であり、伝統的な中国画風に現代的な技法を融合した視覚表現が評価されている。

一部のX投稿によると、本作はすでに『大魚海棠』の興行収入(120億元)を上回り、中国産2Dアニメの最高記録を更新。最終興行収入は300億元に達する可能性もあり、宮崎駿監督の『すずめの戸締まり』(165億元)を抜いて中国で最も売れた2Dアニメ映画となる見込みだ。

(中国経済新聞)