国家税務総局は4月21日、ライブ配信者の管理会社による虚偽の証書発行や脱税、詐欺行為といった重大な不正行為を発表した。
広東省恵州市にある「高賦帥文化伝媒」は、架空の会社を設立した上で計1196件、金額にして2.26億元(約44億円)相当の偽造領収書を発行し、700人以上のライバーの所得税3200万元(約6億2305万円)以上を脱税したほか、約2100万元(約4億887万円)分の税費目が未納となっていた。同社は先ごろ、恵州市の税務局監査部門から処分が下された。

この事件におけるMCN事業者の手口や、業界内における「黒幕」について探ってみた。
MCN事業者は、所属するライバーが獲得したネットでの投げ銭を主な収入源としている。これらの収入は普通、配信サイト側からMCN事業者に支払われたのちにライバーへ振り込まれるが、その際にライバーの所得税を納入する必要がある。ところがこの会社の納税申告を調べたところ、所得税の控除記録が存在しなかった。
税務当局による調査の結果、この会社は配信事業者から振り込まれた金を省外の証書発行会社に送金し、そこで各社員に振り込まれ、その社員がさらに数百件の個人アカウントに振り込んでいることが分かった。これらのアカウントはまさに契約しているライバーのものであり、領収書の名義は情報技術サービス料となっていたが、事実上ライバーの収入になっていた。

税務局の担当者は、「調査の結果、省外から情報技術サービス料の納入書が発行されていた10社はいずれも架空の会社であり、ライバーが税金を払わなくて済むように実際の収入を隠すことを目的に設けられていた」と述べている。
また中には、ライバーに対して税逃れの支援という「便宜」をはかる形でユニオンに誘い込むMCN事業者もあった。
高賦帥は、このような「便宜」を誘いネタにしてライバーを大々的に募集していた。ライバーに振り込む「免税分」のような費目はいずれも「手数料」分を控除しており、一方で架空の会社が発行した領収書を使って控除することで脱税行為をしていた。税務当局や公安当局などは大量の証拠をつかんだのちに摘発に向けて行動を起こし、複数の容疑者を逮捕した。
捜査関係者が分析した結果、高賦帥の脱税事件は背後に「黒幕」が存在していることが分かった。
省外にある架空の会社10社はみな同じエリア内に存在し、そのすべてがここ2年で一気に設立されたというのである。

その「黒幕」とは、「広州玖億財税顧問」という税務を手掛ける会社であって、会社の登録や書類の送信の仕方などすべてのプロセスを詳しく定めて一部始終関与するなど、完全にMCN事業者のために画策していた。
この会社は、「税の調達」を名目に、税控除のための証明類を必要としている会社を誘い、そそのかして、省外のある産業パークに架空の会社を大量に設立していた。
捜査現場では、領収書の偽造をするために作られたこれら架空の会社の社印が大量に押収された。
広州玖億はこのような形で、計3000万元以上の地方助成金を獲得した。大量の証拠が発覚した後に当局側による2度目の摘発活動が行われ、容疑者40人が逮捕された。
恵州市税務局監査部門は先ごろ、高賦帥に対し、追徴課税や延滞金を請求した上、制裁金を科すと決定した。
また広州市の税務局監査部門は、広州玖億に対して虚偽の増値税発行という違法行為を働いたと見なした。主犯格は公安当局により逮捕され、検察院に起訴されている。

中国税務総局によると、2024年はライブ配信者169人を摘発し、不正収入と見なした額は計8.99億元で、虚偽の証書発行で摘発した会社は6.18万社、虚偽の増値税証明の発行や受領の件数が619.08万件、輸出税還付の損失分145.33億元を回収したという。また税務会社計344社を洗い出し、違法な会社やメンバーを税取り扱い業務におけるブラックリスト対象とするなどの措置を講じたという。
(中国経済新聞)