配車サービスでエアコン代をめぐる争い

2024/07/9 11:30

中国では夏を迎え、配車サービスでエアコンをつけないか、エアコン代を別途徴収する運転手が現れている。猛暑が続く一方で燃料代が値上がりし、乗客とのトラブルにつながっている。運転手の間では、「エアコンをつけると燃料代が1日20元(約442円)以上増え、1か月で600元(約13300円)あるいはそれ以上余分にかかる」との声が出ている。重慶市総工会の長安汽車工匠学院のテストによると、20℃でエアコンをつけた場合は燃費が10%~20%悪化、40℃では30%以上悪化するという具合に、温度が高いほどエアコンによる燃費増大分が上がるという。

運転手によると、この分の燃料代を全部負担しなくてはならず、収入が随分と減ってしまうという。運転手は規定により、高速代など通行料金や客待ちの際の駐車料金は別途乗客に請求できるが、エアコン代は対象外である。乗客はその分を請求された場合、苦情を訴えることができ、運転手は運営側から費用を徴収された上に違反点が計上され、悪質な場合は走行停止処分となる。

しばしば格安で急ぎの呼び出しを受けるという重慶のある運転手は、「5キロなら料金は基本11元(約243円)で、エアコンでもつけたら儲けはほとんどない」と話している。

エアコンをつけるか否かは、表向きには乗客と運転手の間の問題に見えるが、実はその背後に、運転手に対する運営側からの控除金が不透明性だという問題が存在している。運転手からすれば、手当が少ない上に控除が多額なのでエアコン代を節約したいのである。重慶工商大学の莫遠明教授は、「控除割合が25%に達するケースもあるが、その算出根拠は不透明だ」と指摘している。運営側の費用が乗車料金に匹敵するぐらいになると、運転手としては当然乗客へのサービスレベルを維持できなくなる。莫教授は、乗客は料金が安いゆえにエアコンを使えなくなっていると言い、適切な料金でないとクリーンで快適な利用ができなくなると見ている。

配車サービスでは最近、このように運営側の控除率が高くて運転手が収入を確保できないという問題が明るみになっている。これについて中国交通運輸省は先ごろ、複数の配車および新手の貨物輸送会社に対し、費用計算ルールを公開し控除割合や会員価格の上限は適切なものとするよう是正指示を出した。

北京市交通委員会も、配車サービスの運営元やタクシー会社に対し、車内をきれいにしたり乗客の要望に沿って適度な温度に設定したりするなど、サービス向上に努めるよう促している。配車サービス大手の「滴滴」は、全国274の都市で3か月間、計6億元(約133億円)にのぼる暑熱手当を支給している。また重慶では、運転手に対し1日30元~40元(約663~884円)の暑熱手当が支給される。乗客とのトラブルが収まることが期待される。

(中国経済新聞)