『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』から5年。中国の奇才ビー・ガン監督がカンヌ国際映画祭で発表した15分のショートフィルム『Bi Gan A SHORT STORY ビー・ガン / ショート・ストーリー』が、ヒューマントラスト渋谷、他で公開されている。
© Dangmai Films / ReallyLikeFilms
元々本作は、中国・上海を拠点にパリなどで商品を展開する猫グッズのブランド「Pidan(ピダン)の依頼によって制作された作品。しかし、作品のクオリティーの高さに、『アネット』や『Rodeoロデオ』のプロデューサーであるシャルル・ジルベール、エリック・ロメールが設立した制作会社であるレ・フィルム・ロサンジュ社が着目し、カンヌでの世界公開を切望したため、今回の一般劇場での公開が実現した。アメリカでは今年、ビー・ガン監督の前作『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』のリバイバル公開の併映作としてシアターリリースされたが、今回世界初となる単独公開が日本で実現した。また、業界初の試みであるワンコイン(500円)上映も大きな魅力だ。
■あらすじ
孤独で変わり者の黒猫は、自由に空を飛びたいカカシに尋ねました。
「この世の中で、一番大切なものは?」
答えに困ったカカシは、黒猫に三人の奇人と会うように進言します。
その三人の奇人とは?
ほろ苦さと引き換えに、めずらしい(甘い)飴を配るロボット。
愛する人を忘れるために、食すると記憶が短くなるという麺を啜る女。
時間を操る魔法を使えるようになりたくて、劇場に棲みついた悪魔。
黒猫は三人の奇人たちに会う為に、
15分間の奇想天外・寓話的映像体験の冒険へ旅立ちます。
ビーガン(畢贛)監督は、1989年6月4日に貴州省凱里市で誕生。度々映画に登場する俳優のチェン・ヨンゾン(本作では悪魔役)は、実の叔父にあたり、映画通であった叔父から受けた影響も多いとされる。2013年の短編作品『金剛経』が第19回香港IFVA賞ニューフェイス部門特別賞を受賞。2015年『凱里ブルース』で長編デビュー。同作で第68回ロカルノ国際映画祭新進監督賞を受賞。2作目にあたる『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』は、第71回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で初上映、世界中の映画祭でも絶賛された。中華圏映画のアカデミー賞とされる金馬奨では撮影・音楽・音響の3部門で最優秀賞を受賞、東京フィルメックスでは学生審査員賞を受賞した。2024年には6 年ぶりとなる長編最新作『狂野時代Resurrection』に着手。SFベースのミステリアスな作品になる予定だ。
(中国経済新聞)