中国恒大は9月28日、香港証券取引所で、執行取締役である許家印会長が犯罪をした疑いで強制措置を講じられているという通達を受けたと発表した。同社は、別途連絡するまで株式取引の停止を継続すると表明している。
許氏は妻の丁玉梅氏と「沈黙式の偽装離婚」をすることで資産の一部を国外に移転した、といった説が出ている。
許氏と丁氏は2022年に離婚したことが分かっている。
中国恒大が8月14日夜に発表した一連のコミュニケの中で、以前は「許氏の配偶者」と称していた丁氏について、「当社およびその関係者から独立した第三者」と明記している。
丁氏は、2021年の年間報告におけるコミュニケでは、取締役会長である許氏の配偶者とされていた。2021年末、許氏と丁氏は中国恒大の株式12億株を共同で売却しており、これにより2人の持ち株率はそれまでの76.69%から67.87%に下がっていた。
丁氏は、2019年10月16日に胡潤研究院が発表した「2019女性実業家ランキング」で、資産額170億元(約3462億円)で26位になっていた。
調査グループの清流工作室のまとめでは、筆頭株主の配当金獲得総額について、許氏の一族がトップとなっている。中国恒大は2009年の上場以来、配当金が累計733.86億元(約1.49兆円)であり、許氏夫婦が株式の7割前後を常時支配していることから、68.54%にあたる累計500億元(1.02兆円)以上を手に入れる見込みという。
恒大集団は、未公開取引の枠組み「小紅筹」により香港で上場手配を整え、許氏が100%支配しているイギリス領ヴァージン諸島の会社と、丁氏が100%支配しているケイマン諸島の会社により、中国恒大を通じて配当の大部分を手に入れた。そして危機のさなかにそれを国外に移転し、「偽装離婚」をした上で「国外にいる元妻」の丁さんの懐に入れる、という公算である。
(中国経済新聞)