中国物流業界、AI導入を加速 「ダブル11」の物流需要に対応

2026/10/28 16:21

中国で毎年恒例のネット通販セール「ダブル11(11月11日、シングルの日)」が始まり、物流各社が人工知能(AI)やスマートロボットなどの先端技術を活用し、物流業務の効率化を急いでいる。倉庫管理や荷物の仕分け、輸送、配送など幅広い工程にデジタル技術を導入し、セール期間中の荷物の急増に備える。

申通快逓(STOエクスプレス)は、長期間にわたるセール対応で増大する人員の負担や運営上の課題に対処するため、AIを「デジタル従業員」として現場業務に初めて本格投入した。同社のAIエージェントプラットフォーム「SClaw」を活用し、従来のバックエンドでのデータ分析にとどまらず、実際の業務遂行にもAIを参加させる。

具体的には、顧客対応ではAIを活用した問い合わせ対応や荷物追跡、異常の検知・対応を支援する。中継拠点では幹線輸送の最適ルートを動的に策定し、配達の最終段階では、AIによる「デジタル分身」が配達員の電話連絡やルート計画を支援する。また、デジタル品質管理システムを通じて、生鮮食品など取り扱いに注意を要する荷物の異常を検知し、事前に警告する仕組みも導入している。

AIによる業務支援に加え、物流各社はスマートな意思決定システムや物流ロボットを活用し、輸送能力の配分や現場作業の効率向上にも取り組んでいる。

京東物流(JDロジスティクス)は、アップグレードした大規模AIモデル「超脳(スーパーブレイン)3.0」と「狼族」ロボットを「ダブル11」期間中に全面的に活用する。京東物流の担当者によると、意思決定の中枢を担う「超脳3.0」は、地域ごとの注文量を事前に予測し、全国の輸送能力を動的に調整する。AIが推奨する宅配の最適ルートについては、採用率が90.2%を超えている。

現場作業でも、物流ロボットの活用範囲が広がっている。倉庫内の仕分け作業に大規模導入されている具身知能(エンボディドAI)型の器用なロボットアーム「異狼(イーラン)」は、荷物の全工程にわたる追跡精度が99.9%に達するという。

さらに、四川省や貴州省の各地では、ドローン「飛狼(フェイラン)」による農村部への宅配サービスが大規模に展開されている。山間部や水域を越える必要がある地域など、複雑な地形にも対応できるため、「ダブル11」期間中のラストワンマイル配送を支える新たな輸送手段として期待されている。

こうした技術革新は、現場作業や輸送管理にとどまらず、サプライチェーン全体にも広がっている。

順豊(SFエクスプレス)は、デジタル技術を活用したサプライチェーン管理能力を生かし、顧客企業に在庫の前倒し配置や倉庫の分散配置を提案している。販売量を予測したうえで、商品を消費者に近い倉庫にあらかじめ配備することで、最終配送の距離を短縮し、注文から配送完了までの時間を減らす狙いだ。

円通速逓(YTOエクスプレス)も、物流業務のデジタル化を継続的に推進している。現在、デジタルツイン技術は全国の集配・仕分け拠点を網羅し、マシンビジョンは24の業務シーンに導入されている。また、100を超えるAIエージェントが輸送ルートの最適化、配達状況の分析、顧客対応の処理などに組み込まれているほか、28人分に相当するデジタル従業員が運営や顧客サービスなどの分野で稼働している。

物流企業による先端技術の導入加速は、AIとサプライチェーンの融合が進んでいることを示す一例だ。

中国物流・購買連合会の胡大剣副会長は、AIの活用が個別業務への導入からサプライチェーン全体の連携へ、さらに個々の企業内での活用から産業チェーン全体での協調へと発展していると指摘する。

同連合会がこのほど発表した「中国サプライチェーン発展報告(2025~2026年)」によると、物流・サプライチェーン分野におけるAIの導入率は37%を超えた。分野別では輸送が78%と最も高く、安全・コンプライアンス分野が52.73%、スマート倉庫が47.27%となっている。

「ダブル11」に向けた物流各社の取り組みは、AIが業務の一部を支援する段階から、需要予測、輸送計画、倉庫管理、配送までを横断的に最適化する段階へと進みつつあることを示している。

(中国経済新聞)