中国のAI企業DeepSeekの創業者である梁文鋒(りょう・ぶんほう)氏の個人資産が急激に増加し、360億米ドル(約5兆円超)に達したことが注目を集めている。最新の融資ラウンド完了後、資産は1倍以上となり、グローバルなAI大規模言語モデル(LLM)分野の創業者の中で最高額となった。
ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、梁氏の現在の資産は360億ドルで、以前の約167億ドルから大幅に増加した。これにより、Anthropicの共同創業者ダリオ・アモデイ氏やOpenAIの共同創業者グレッグ・ブロックマン氏を上回った。なお、この比較は主にAI大規模モデル事業を主力とし、大部分の収入がこれに由来する企業に限定されており、アリババやテンセントなどの多角化大手テック企業、データセンターや半導体などのAI関連サプライチェーン企業は除外されている。
梁氏の資産の大部分は、DeepSeekに対する持株に由来する。今年6月、DeepSeekは約500億元(約1兆円)の資金調達を完了し、企業評価額は3300億元を超えたとされる。梁氏自身も200億元を出資し、持株比率は希薄化後も約78%を維持しているとブルームバーグは算出している。
梁文鋒氏は1985年、中国広東省湛江市呉川市出身。父親は小学校教師で、幼少期から数学モデルとアルゴリズムに強い興味を持っていた。17歳で高考(大学入試)状元として浙江大学電子情報工学科に進学し、情報・通信工学の修士号を取得。在学中は機械視覚やPTZカメラの目標追跡アルゴリズムに関する研究を行い、論文を発表した。
2008年頃から量化取引(クオンツ)分野に取り組み、浙大時代の仲間らと投資管理会社を設立。2013年には「杭州雅克比投資管理有限公司」を共同創業し、AIを活用した金融データ分析による投資戦略を展開した。これが後の「幻方量化(High-Flyer Quant)」へと発展。2019年には中国で初めて1000億元超の資金を調達する量化ヘッジファンドとなり、AIチップを活用したアルゴリズム取引で急成長を遂げた。
2023年12月、38歳の梁氏は幻方量内のAI研究チームを基盤に「DeepSeek」(杭州深度求索人工智能基礎技術研究有限公司)を設立。金融分野で培ったAI技術を活かし、汎用人工知能(AGI)開発に乗り出した。チームは清華大学、北京大学などのトップ校出身の若手博士・学生を中心に構成され、高年次専門家ではなく創造性と情熱を重視する独自の採用方針を採っている。
DeepSeekは効率性の高さが特徴で、2024年にリリースしたオープンソースモデル「DeepSeek-V3」は、米大手比で大幅に低コスト(訓練費用約600万ドル)ながら高い性能を発揮し、シリコンバレーでも「東方からの神秘的な力」として話題となった。オープンソース戦略とHuawei昇騰などの国産エコシステム対応により、急成長を続けている。
梁文鋒氏は典型的な「大企業出身」ではなく、量化金融からAI基礎研究へ転身した異色の起業家だ。自社で資金を賄う「自供血」能力を活かし、初期は積極的に外部融資を控えていたが、事業拡大に伴い戦略的な資金調達にシフト。技術理想主義と現実的な経営手腕を兼ね備え、中国AI産業の象徴的な存在となっている。
(中国経済新聞)
