「618」は、中国の大手EC企業 JD.com(京東)公式サイト が創業記念日にあたる6月18日に合わせて始めた大型セールイベントで、現在では中国最大級のネット通販商戦の一つに発展している。近年は京東だけでなく、Tmall(天猫)公式サイト や Douyin(抖音)公式サイト など主要ECプラットフォームも参加し、「ダブル11(独身の日)」と並ぶ一大消費イベントとなっている。
中国最大級のネット通販セール「618」の本番まで1カ月を切る中、主要ECプラットフォームではすでに第1弾キャンペーンが始まっている。今年は売上拡大を狙った値下げ競争一辺倒から脱却し、ブランド価値の向上や顧客との長期的な関係構築を重視する動きが広がっている。

大手EC企業の JD.com は5月31日、今年の「618」商戦の最初の実績を公表した。セール開始から4時間で、主要100ブランドの取引額は前年同期比で平均5倍以上に増加した。また、新たに参加した出店者数は前年同期比62%増となり、初参加の51店舗が売上高1000万元(約2億円)を突破、1516店舗が100万元(約2000万円)を超えた。
海外市場でも好調な滑り出しを見せている。越境ECサービス「京東全球售」では取引額が前年同期比で倍増し、カメラ・撮影機器、化粧品、スポーツ用品、食品、スマートフォン関連アクセサリーなどのカテゴリーで300%を超える伸びを記録した。
短編動画プラットフォームを運営する Douyin(抖音)公式サイト が発表したデータによると、5月15日から20日までの第1段階キャンペーンでは、クーポン施策によって取引額が1億元を超えた店舗数が前年同期比325%増加した。また、15万人を超えるライブコマース配信者の売上高は前年同期比5倍となった。
今年の「618」ではAI活用も大きな特徴となっている。京東は今回のセールを「AIが全面的に導入された初めての618」と位置付けている。独自AI大規模モデルを活用したデジタルアバター配信サービスにより、ライブ配信を実施した店舗数は前年同期比6倍に増加し、関連売上高は7000万元を突破した。
抖音も商家向けに生成AI(AIGC)ツールを開放し、ショート動画や商品紹介コンテンツの制作効率向上を支援している。
一方で、出店企業側の販売戦略には変化が見られる。これまでの「値下げによる販売数量拡大」から、「利益確保とブランド育成」へと軸足を移す企業が増えている。
ある食品メーカーの担当者は、「今年の618はブランドの中長期戦略に合わせ、極端な値引きは行わない」と説明する。セール価格は通常より安く設定するものの、過去のように利益率を大きく犠牲にして販売数量を追求する方針は取らないという。同社では売上高は前年並みを見込む一方、利益率は15%以上改善する見通しだ。
背景には、低価格競争の限界がある。価格を下げても売上増加効果が以前ほど大きくなくなったほか、広告費や流通コスト、返品率の上昇により、「安売りによる集客」が持続可能な戦略ではなくなりつつある。
実際に、近年は商品の品質や独自性を重視した中高価格帯市場へのシフトが進んでいる。企業は健康志向や利便性といった消費者ニーズに応える新商品開発を進め、ブランド価値の向上を図っている。
ライブコマース業界でも変化が起きている。従来の「流量重視」から「コンテンツ重視」へと移行しつつあり、ライブ配信は単なる販売の場ではなく、ブランド認知や顧客との信頼構築の手段として活用されるようになっている。
業界関係者は、「消費者は以前よりも合理的な購買行動を取るようになり、単純な値引きには反応しにくくなっている」と指摘する。各プラットフォームも「最安値」を強調するのではなく、ルールの簡素化や会員サービスの強化、新商品の投入などを重視する方向へと舵を切っている。
こうした変化を受け、「618」はもはや単なる大型値引きセールではなくなりつつある。売上拡大だけでなく、ブランド構築、新商品のプロモーション、顧客維持、さらにはAIなど新技術の実証の場としての役割も担う、総合的なマーケティングイベントへと進化している。
(中国経済新聞)
