2025年7月28日、上海市第三中級人民法院は、華為技術有限公司(Huawei)の元技術総監(CTO)・張琨(ちょう・こん)被告に対し、営業秘密侵害などの罪で懲役6年および罰金300万元(約6,300万円)の判決を言い渡した。さらに、出所後5年間は半導体関連業務に従事することを禁止する「禁業令」も併せて科された。
張被告と共に起訴された13人にも有罪判決が下され、総額1,350万元(約2億8,350万円)の罰金が命じられた。彼らが設立した通信チップ開発企業「尊湃(Zunpai)通信」も強制解散とされ、保有する技術資料はすべて廃棄された。
米国籍を持つエンジニア、急成長ベンチャーの裏側
判決文によると、張被告は北京大学卒業後、中国科学院で修士号を取得し、渡米してダブル修士号を得た経歴を持つ。米国企業クアルコムで勤務したのち、2011年に帰国し、米国籍を有したまま華為の半導体子会社・海思半導体に入社。無線通信技術の専門家として「Wi-Fiの王」とも呼ばれ、年収約600万元(約1億2,600万円)に達していたという。

しかし2020年末頃から社外持ち出しを計画。複数の同僚を誘い、高額報酬や株式を条件に核心技術者を勧誘した。2021年に華為を退職後、南京で「尊湃通信」を設立し、社員の約6割を海思出身者で占めた。
調査によれば、社員らは在職中に撮影、手書き、ファイル分割、スマートウォッチでの搬出など、さまざまな手段で華為の資料を流出させていた。さらに、勤務先に隠れて二重就業する例も確認された。
投資家からの注目と急成長
尊湃通信は設立から2か月でベンチャーキャピタルから**1億元(約21億円)を調達し、2022年には小米グループなども出資。2023年初頭には企業評価額が10億元(約210億円)**に達した。Wi-Fi6対応チップを次々と発表し「研究開発速度は華為の3割増」と喧伝したが、華為が市場から入手した製品を分析したところ、40項目で自社技術との類似が確認され、内部識別情報すら残っていたとされる。
強制捜査と判決の特徴
2023年4月、上海市と江蘇省の警察が尊湃通信の拠点を同時に捜索し、サーバー7台や資産**9,965万元(約21億円)**を押収した。その後2年以上の捜査を経て、今回の判決に至った。
今回の判決には2つの特徴がある。
技術の「重合率90%」という定量的基準をもって営業秘密侵害を認定した点
業界で初めて「禁業令」が科され、再犯防止の枠組みを設けた点
業界への波及効果
華為側は、同社が9年・**9億元(約189億円)**以上を投じて開発した成果が危うく流出するところだったと指摘。もし尊湃の量産が進めば、年間数億ドル規模の損失やWi-Fi7国際標準化への影響が懸念された。
(中国経済新聞)