滴滴と美団、ブラジル市場で激しい競争、不正競争を巡り相互提訴

2025/08/21 07:30

中国を代表するEC生活プラットフォームである滴滴出行(Didi)と美団(Meituan)が、ブラジル市場で熾烈な競争を繰り広げている。両社は国内でのライバル関係を海外に持ち込み、互いに不正競争を理由に提訴する事態に発展している。

8月19日、滴滴のブラジル子会社が運営する外食デリバリーサービス「99Food」は、サンパウロの地裁に対し、美団の海外デリバリープラットフォーム「Keeta」を商標権侵害および不正競争行為で提訴した。一方、その5日前には美団側が99Foodを提訴。99Foodが現金前払いインセンティブを通じて加盟店と「二者択一」の排他契約を結び、Keetaや他のプラットフォームとの協力を禁止していると主張している。

ブラジルメディアによると、99Foodは加盟店との契約で、Keetaやコロンビアに拠点を置くラテンアメリカの即時配送プラットフォーム「Rappi」、およびその関連企業との直接的・間接的な商業関係や契約の締結を禁止。これにより、競合他社が経済的・戦略的優位性を得ることを阻止している。99Foodはこうした制限の対価として、加盟店に初期資金支援として現金前払いを提供しているという。これに対し、99Foodは現時点で提訴に関するコメントを発表していない。

一方、美団は先に99Foodを提訴。8月11日、サンパウロ地裁は、99Foodに対し、Googleなどの広告プラットフォームで「Keeta」のキーワードを混同させる検索結果操作を3日以内に停止するよう命じる仮処分を発行。違反した場合、1日あたり2万レアル(約50万円)の罰金が科される。

99Foodの反訴では、Keetaのブランドカラー、グラフィック、フォントが99Foodと極めて類似し、商標権を侵害していると主張。さらに、Keetaの配送員の装備や配送バッグ、ウェブサイトやアプリのインターフェースも99Foodと酷似しており、商業的外観の権利を侵害していると訴えている。

ブラジルの外食デリバリー市場は、年間120億ドル(約1.5兆円)規模で、年20%の成長率を誇る世界第5位の市場だ。しかし、現地企業iFoodが市場シェアの80%以上を握る中、新規参入者である滴滴と美団は厳しい競争に直面。滴滴は2018年にブラジルの配車サービス「99」を買収し、2019年に99Foodを立ち上げたが、iFoodの「二者択一」戦略により2023年に一旦撤退。2025年4月に再参入を果たした。一方、美団は5月にKeetaをブラジル市場に導入し、5年間で10億ドル(約1250億円)の投資を計画している。

両社の競争は、国内での「外食戦争」を彷彿とさせる。美団は中国で培ったアルゴリズムとドローン配送技術を活用し、配送効率の最適化を目指す。対する滴滴は、99の配車網を基盤に70万人の配送員と5000万人のユーザーを抱え、配車とデリバリーのシナジーを活かす戦略だ。

中国企業の海外進出は、ブラジルのような新興市場での成長機会を捉える一方で、互いに足を引っ張り合う構図も浮き彫りにしている。ブラジル経済保護行政委員会(CADE)は2023年、排他契約を禁止する規制を導入し、市場の公平性を確保したが、滴滴と美団の訴訟合戦は競争の過熱を物語る。業界関係者は、両社が現地企業iFoodに対抗するためにも、過剰な対立を避け、協力の道を探るべきだと指摘する。

(中国経済新聞)