河南省周口市の第六人民医院産婦人科主任、邵医師(57)が長期にわたるネットいじめを苦に転落自殺した事件が、大きな注目を集めている。邵医師の夫である張氏は8月4日、メディアに対し、遺体が同日朝に故郷で埋葬されたことを確認した。夫は、3件の医療紛争が原因で抖音(TikTokの中国版)上で患者家族が動画を投稿し、ネット水軍による攻撃がエスカレートしたと証言。邵医師は生前、警察に通報したが対応が不十分だったとして、名誉回復を強く求めている。周口市衛生健康委員会は5日、調査組を設置したことを発表した。
事件は8月1日、邵医師が抖音に別れの動画を投稿した後、病院内で転落した。病院は即座に救急措置を取ったが、傷が重く、8月2日未明に死亡が確認された。夫の張氏は、ネットいじめのきっかけは3件の医療紛争だったと説明。最初に2件の患者家族が動画を投稿したが注目度は低かった。しかし、これらの家族が抖音上で互いにフォローし、動画を推奨し合うようになり、大量のネット水軍が邵医師を攻撃するようになったという。
張氏は「7か月以上にわたり3つのアカウントから連続的な攻撃を受け、彼女は極度の無力感に陥った」と語る。邵医師は7月30日、周口市太昊路派出所に通報したが、警察は不受理とした。夫は電話で妻を慰めたという。翌31日、病院スタッフと共に再び派出所を訪れ、今回は受理されたが、警察は動画削除などの即時対応を明確にしなかった。張氏は「ネットいじめで自殺するケースは多い。軽く見ないでほしい」と警察に訴えたが、効果がなかったと悔やむ。
8月1日、邵医師は孫たちとビデオ通話した後、夫に遺書を残し転落。遺書には3件の医療紛争の詳細が記され、「絶対に名誉を回復してほしい」との言葉があった。夫は「彼女は絶望し、誰も助けてくれなかった」と涙ながらに語った。
事件後、派出所は現場で邵医師の携帯を押収し、別れの動画と攻撃者の動画をすべて削除させた。8月2日、周口市公安局、衛生健康委員会、病院が会議を開き、公安局は3つの専門チームを設置して攻撃アカウントの調査を開始した。周口市衛生健康委員会は5日の通報で、邵医師の死亡を確認し、調査組を設置して詳細を究明すると発表。医療紛争の事実関係やネットいじめの責任を追及する方針だ。
事件がネットで拡散すると、邵医師の元患者たちが追悼動画を投稿。一人は「昨年出産時、麻酔で震えていた私を邵主任が頭を抱いて慰めてくれた。優しくて安心できた」と感謝を述べた。他にも「大出血で入院時、手を握って励ましてくれた。二胎も彼女に任せたかったのに」と悲しむ声が相次いだ。一方、ネットいじめを批判する意見も多く、「医療従事者を守るべき」「ネット暴力を規制せよ」との声が上がっている。
この事件は、医療紛争がネットいじめに発展し、医師の精神的負担を増大させる問題を浮き彫りにした。中国では近年、医師に対するネット攻撃が社会問題化しており、専門家は「ネット暴力を法的に厳罰化すべき」と指摘。新京報の社論では、「ネットいじめが命を奪う事態を防ぐ仕組みが必要」と論じている。調査の結果が、医療現場の保護強化につながるかが注目される。
(中国経済新聞)