このところマネーロンダリングへの取り締まりを強化している中国で、中央銀行である中国人民銀行が「貴金属および宝石事業者向け反マネーロンダリング及びテロ資金供与防止管理法」を8月1日より実行すると発表した。数多い貴金属や宝石の取り扱い店なども対象とし、報告すべき取引の最低額をこれまでの5万元以上から10万元以上に引き上げる。
この法は、貴金属や宝石業界のマネーロンダリング対策を明確に規定し、監督の対象を定めたものであり、貴金属は「金、銀、プラチナ、およびそれらを原料とした硬貨、標準延べ棒、製品、中間品、精錬済み原材料など」、また宝石は「ダイヤモンド、玉石など天然ものの各種原材料およびアクセサリー、製品の現物」としている。
対象となるのは、中国国内で法に基づき貴金属や宝石の現物取引を手掛ける事業者である。
中国人民銀行は2017年9月に、貴金属取引場所の反マネーロンダリング及びテロ資金供与防止活動を強化する策を発表しており、当時は反マネーロンダリング監査分析センターへの報告を義務付ける取引の最低額について、「1日1回あたり現金で中国元5万元、外貨の場合は1万ドル相当」としていた。
今回の法律は、報告義務の対象最低額を10万元(または相当額の外貨)に引き上げている。
さらに、各事業者における取引履歴の保存期間について、取引先の個人資料については実務関係の終了から10年以上、取引情報については取引終了から10年以上としている。
招聯金融の董希淼主席研究員は、「貴金属や宝石の取引は、金銭価値が高く、流動的で、価格決定が複雑であること、また現金取引が多く、国外への移動も容易で、かつ隠密性や業界の仕組みなどの問題から、マネーロンダリングやテロ活動への資金供与の温床となりやすい」と述べている。
金融業界に詳しい博通諮詢の王蓬博氏も、「貴金属や宝石関連は秘密裏に取引されることが多く、違法な業者によるマネーロンダリングが発生しやすい。これらの業界を監視対象とすることで抜け穴を防ぎ、金融リスクのさらなる防止や市場秩序の維持につながる」と指摘している。
(中国経済新聞)