恋愛小説家として知られる作家の瓊瑤(けいよう、本名=陳喆)さんが12月4日午後1時22分ごろ、台湾新北市淡水区の自宅で、遺書と共に死亡しているのが発見された。地元警察は、外力の介入がなかったことを確認した。享年86歳。
1949年、16歳の時に発表した『彩雲』で小説家デビュー、1963年発表の『窓外』によりヒット作家となった。繊細な筆触で浮世離れした略奪愛模様を蜿蜒として描くため、「男性は金庸を読み、女性は瓊瑤を読む」と言うほど、中華圏では絶大な人気を誇り、多くの作品は映画やテレビドラマに改編された。
瓊瑤(左)と映画『窓外』の主演台湾女優林青霞(右)
遺書には、自身の死を「軽やかに」と表現し、病苦を避けたいという意志を示し、「私は十分に生きた。この人生を無駄にしたことはない」と記していた。以下、遺書の全文和訳です。
親愛なる友人そして親友の皆様:
泣かないで、悲しまないで、同情しないで。 「ふわりと」去りゆきます。
私の一番好きな言葉「ふわり」。「自主性、安らぎ、自由」の「飛翔」を意味し、徐々に痛みを感じていた身体が解放され、「ふわり」と雪片が飛んでいきます。
これは私の願いです。「死」はすべての人がたどる道であり、最後の「大問題」でもあります。運命に任せたくない。ゆっくりと枯れていくのではなく、最後の大問題の「決断」をするのです。
命の歩みに対する神様の手配はあまり良いものではありません。人は年をとると、「衰弱、退化、病気、通院、治療、そして死」という非常につらい期間を経なければなりません。この期間は長くても短くても、老いて死ぬ人からすれば大変な苦しみです。運が悪いと「生命維持の管」に頼る「寝たきり老人」にもなりえます。そのような悲劇を見てきました。そんな「死」は望んでいない。
私は「火花」となって全力で燃えてきました。今、炎が消える前に、ふわりと去るためにこうした形を選びます。言いたいことはすべて、ビデオ「When the Snowflakes Fall」に収めています。どうか皆様、繰り返し見て私が表現したいことをすべて理解して下さい。
皆様、私の「死」を悲しまないで、私のために笑ってください。命の美しさは、「愛し、憎み、笑い、泣き、歌い、話し、走り、動き、人間の世界と付き合い、気ままな人生を送り、憎しみと同じくらい悪を憎み、元気に生きられること」なのです。どれも私の人生で経験したものです。私は「生きてきた」し、この命を決して裏切りませんでした。
私が一番手放せないのは家族と皆様です。 「愛」は私の心にしっかりと結ばれ、皆さんは私が最も恋しいものです。私の魂(人間に魂があるかは知りませんが)も「ふわり」となれるように、私のために笑って、歌って、踊ってください。天国の私の魂が「一緒に踊り」をします。
青春時代の瓊瑤
さようなら、愛する皆様。この人生で皆さんと出会い、知り合えて、光栄でした。
私の「死に方」は、命の最後に実行するのでご注意願います。若者の皆さん、どうか簡単に命を捨てないでください。一時的な挫折は素晴らしい人生の「試練」なのでしょう。試練に耐えて、私のように86、7歳まで生きて下さい。体力が尽きた時に、死とどう向き合うか選んで下さい。ただその時までに、人間が「お年寄り」を支え、幸せに「去りゆく」のを支えるとても人道的な方法を見つけることを願います。
大切な皆様、勇気を持って、強い「自分」を生きて、世の中を裏切らないでください。この世の中は完全無欠ではありませんが、思わぬ喜怒哀楽もあります。あなただけの素晴らしいことを逃がさないで下さい。
言いたいことは山ほどありますが、最後に、皆様のご健康と幸せを心よりお祈り申し上げます。
淡水双英塔にて 瓊瑤 2024.12.3
(中国経済新聞)