先ごろ行われた2024年世界大健康博覧会の第6回長寿時代フォーラムで、武漢大学董輔礽経済社会発展研究院の趙耀輝教授は、「中国では今、高齢者の大部分が別居生活をしており、以前のような複数の世代が同居する形ではなく、子供が不在という状態が広まっている。これでは介護問題を引き起こしかねない」と述べた。
趙教授は、高齢者の生活を研究するため、「中国健康及び養老追跡調査」(CHARLS)の最新データをもとに、 60歳以上の生活者がいる6000世帯あまりの1万人および子供1.9万人に対して調査を行った。
別居生活とは、お年寄りが子供と同居せず1人暮らしまたは夫婦で生活している状態を指す。今回の調査による推計では、現在別居生活をしている「60歳以上の人口」は約1.6億人で、うち80歳以上の割合が急激に増えて半数を占めている。
2023年末現在、中国で60歳以上の高齢者の数は2.97億人で、全人口に占める割合は21.1%である。上記の推計によると、このうち別居生活をしている割合は54%となる。
趙教授は、「60歳以上で、別居生活の割合と子供との同居者の割合は2018年ごろに逆転した。これは重大な意味がある」と述べた。コロナ禍の後で子供との同居割合は幾分増えたが、それでも別居生活者の方が10ポイント以上上回っている。このところ都市部で別居者の割合が急激に増えており、都市の戸籍を持つ親は別居傾向が強い。一方で農村部の方は、2015~2020年に別居生活者が大きく増えているという。
また今回の調査では、別居生活者の増加について、女性が多い、都市に戸籍あり、配偶者がいる、学歴が高く持ち家あり、独力での生活が可能、子供の数が少ない、学歴や所得が高い、などといった要因も分かった。
趙教授は、「今の状況から見て、別居者はほとんどが近くに子供がいる。このようなスタイルは2世代でそれぞれ自分だけの生活の場ができる上、介護もさほど問題にならないだろうが、こうした状態が長続きしないだろう」と述べる。「子供離れ」という傾向は、たとえ独力での生活が難しくなっても続くものとみられる。
高齢者世帯に対する介護の人手不足は今後さらに悪化する見通しである。データによると、中国の平均世帯人数は、2000年は3.44人だったが、それから10年間で年平均0.011%ずつ減って2010年には3.10人に、さらに10年間で平均0.017%減り2020年には2.62人となっている。
(中国経済新聞)