今年の中国全人代における政府活動報告で、初めて水素エネルギー産業への成長目標が発表され、一段と重要視していく姿勢が示された。スマートコネクテッドの新エネ車関連事業などのさらなる基礎固めや拡大をはかり、水素エネルギー、新素材、新薬などフロンティアな新興産業を伸ばしていくと強調している。また、水素エネルギー産業の成長に向けての提案も続々と発表された。
中国の「水素エネルギー産業発展中長期計画(2021-2035年)」によると、まず2025年までの目標として、コア技術や製造工程の基盤を固め、燃料電池車の保有台数を約5万台とし、水素ステーションを設置するほか、再生可能エネによる水素の生産量を年間10万トン~20万トンとし、二酸化炭素の排出量を100万トン~200万トン削減する。さらに2030年までに、水素エネルギー産業の技術革新やクリーンエネルギーによる水素供給体系を整え、炭素全排出量のピークアウトを果たす。そして2035年までに、多様な水素エネルギーの利用の仕組みを作り、末端エネルギー消費分に占める再生エネ製造分水素の割合を引き上げる。
全国政治協商委員である美錦能源の姚錦竜(Yao Jinlong)会長は、「水素エネルギー産業はひとまず成果を出し、特に交通関連の先行実施で効果が著しいが、産業全体ではまだ技術革新やインフラ建設、実用化について課題を抱えている」と指摘する。2023年末現在、中国の水素ステーションの数は世界でトップであるが、大量の物を遠くに移送するなどといったニーズに応えられる状況ではないという。
水素エネルギー産業で重要な存在である燃料電池車について、エネルギー密度が高く急速充填可能というメリットもあるが、実用化を図る上で電気自動車と比べてコストがかかり、インフラ建設も遅れている。2023年の中国の燃料電池車販売台数は前年比72%増の5805台で、これから伸びる余地はあると言える。
これらの課題や可能性について、全人代ではかなりの提案が打ち出された。水素の大規模な利用や産業の質の高い発展に向けて、政策や法体系を合わせて整備し、インフラ建設を急ぎ、イノベーションをし、炭素取引の制度作りなどといった意見が出ている。特に補助金制度、水素の供給、充填所の建設などについて、企業での研究開発や生産活動などの資金対策や、より水素の利用範囲の拡大といった面で、政府のさらなる支援や整備が必要であるという。こうした努力をすれば、中国の水素エネルギー産業は飛躍的に伸びて、カーボンニュートラルに貢献することになる。
(中国経済新聞)