旅行ガイド出版社「ロンリープラネット」が中国撤退 中国人旅行者の世界観に多大な影響

2024/07/3 11:30

世界的に有名な旅行ガイドブック出版社の「ロンリープラネット」(Lonely Planet)は6月26日午後にWechatで、「楽しいご旅行を」とのコメントで中国オフィスの閉鎖を発表した。中国での出版事業やすべてのSNSアカウントを停止し、中国語のガイドブックの発行を終了するという。2013年から中国語での旅行ガイドや刊行物を300種類以上出版し、販売部数は数百万部に達して、旅行のバイブル的な存在になっていた。

ロンリープラネットは、オーストラリア人のトニー・ウィーラーさんと妻のモーリーン・ウィーラーさんが1972年に立ち上げた旅行ガイドブック発行の老舗で、旅行の体験を客観的でリアルに評価し、スタンダードで基本的な目的地情報を載せていることで、世界のバックパッカーに愛用されている。2006年に中国の著名な出版社である三聯書店と提携して初めて中国語版を出版し、フリーな旅を楽しむ人々の貴重な情報源となっている。

中国では今回の撤退を受け、多くの読者がロンリープラネットにまつわる旅行の思い出をSNSで発表した。会社員の「米格」さんは、懐かしさをこめて昔の「日本」「北欧」「コペンハーゲン」「トルコ」のガイドブックを掲載した。

華東師範大学の朱明教授は、「海外での研究生活では常にロンリープラネットのガイドブックを携えていた。各国のガイドブックを持って世界中を見て回ろうと思っていた」とコメントした。また、中国各地の様々な知られざるスポットの紹介も期待していたが、それも思い出になってしまったという。

また地理学者の相欣奕氏は、かつてドイツへ訪問研究していた時に常にロンリープラネットの「ドイツ」のガイドブックを携えていた。本帰国する際には持ち帰らずに研究所の宿泊所1階の本棚に残しておいたという。「初めて訪れた中国人が貴重な物に出会ったと感じるだろう」とのことである。

2018-2021年にロンリープラネット中国オフィス市場部に勤務していた胡俊豪さんは当時を振り返り、インターネットの普及で旅行書籍の出版業は続かなくなるものとわかっていた、と語った。ネットでの意見や要望をどんどん吸収して、新たなニーズに合った本の出版を試みるなど、様々な対応策も講じたという。2019年発行の「THE SOLO TRAVEL HANDBOOK」や「EPIC RUNS OF THE WORLD」など特色ある本はかなりの売れ行きを示した。

中国撤退は残念な結果であるが、ロンリープラネットが残した旅行の文化や心は、旅する人々の胸にいつまでも刻まれるだろう。

(中国経済新聞)