中国・武漢市の「中国光谷(東湖ハイテク産業開発区)」が、AI時代の中核産業である光通信・半導体分野で存在感を急速に高めている。AI向けデータセンターや6G通信への投資拡大を追い風に、光通信関連企業の業績や企業価値が急伸し、「世界光谷」の実現に向けた動きが加速している。
7月には、「光谷七星」と呼ばれる光通信分野の主要7社の時価総額・企業評価額の合計が一時1兆元(約3兆3,000億円、1元≒33円)を突破した。長飛光繊(YOFC)の時価総額は一時3,000億元(約9兆9,000億円)を超え、長江存儲(YMTC)は企業価値1,600億元(約5兆2,800億円)でIPO(新規株式公開)を目指している。また、華工科技、光迅科技は時価総額1,000億元(約3兆3,000億円)を超え、烽火通信、高徳紅外、中信科移動も500億元(約1兆6,500億円)を上回る規模へ成長した。
こうした評価の背景には、武漢が世界有数の光電子産業集積地であることがある。世界の光ファイバー・光ケーブルの約25%が光谷で生産され、世界で使用される光伝送装置の4台に1台が光谷製とされる。地域には約1万6,000社の光電子情報関連企業が集積し、中国最大級の産業クラスターを形成している。

AIの急速な普及に伴い、光通信市場は「スーパーサイクル」に突入した。AI大規模言語モデルの高度化や超大規模データセンター建設が進む中、高速・大容量通信を支える光ファイバーや光モジュールへの需要が急増している。業界予測では、2025年のAI需要により世界の光ケーブル需要は前年比77%増加し、2025~2029年の年平均成長率は26%に達する見通しだ。北米では2025年の1.6T光モジュール市場が200億ドルを超え、2026年の世界市場は300億ドル以上へ拡大すると見込まれている。
その恩恵を最も受けている企業の一つが長飛光繊だ。同社は2026年上半期の親会社株主帰属純利益が24億~30億元(約790億~990億円)となり、前年同期比711~914%増になる見通しを発表した。売上高ではなく利益が大幅に拡大しており、AI向け需要の急増が業績を押し上げている。
また、華工科技も2026年第1四半期の純利益が前年同期比55.76%増となり、海外売上高は74.6%増加した。特に光インターコネクト製品の海外輸出は122.1%増となり、800G超の高性能光モジュールの売上高は前年同期比13,974%増、前四半期比229%増という驚異的な伸びを記録した。AIデータセンター建設の拡大を受け、同社は2026年第4四半期までに800G以上の光モジュール月産能力を120万個以上へ引き上げる計画で、タイ工場もフル稼働している。
武漢の光通信産業の歴史は約50年前にさかのぼる。1976年、中国初の石英光ファイバーが武漢・東湖地区で誕生した。当時は主要部品を海外に依存していたが、その後、中国初の国家級ハイテク産業開発区、中国光谷の設立、国家自主イノベーションモデル区への指定などを経て、世界最大規模の光ファイバー・光ケーブル生産拠点へと発展した。
2025年末時点で光谷の光電子情報産業の規模は6,600億元(約21兆7,800億円)を超え、周辺都市を含む武漢都市圏全体では産業規模が1兆元(約33兆円)を突破した。国家級「専精特新(専門性・精密性・特色・革新性)」企業は196社、省級以上の専門家は400人を超え、研究開発力でも国内トップクラスを維持している。
さらに光谷は、6G時代を見据えた次世代技術でも先行している。中信科移動は6G関連特許を2,000件以上出願し、衛星通信と地上通信を融合する技術で国際標準化を主導している。同社は2026年に70億元(約2,310億円)以下の第三者割当増資を実施し、衛星インターネットと6G研究開発を強化する計画だ。

長飛光繊は、6G通信の中核技術として期待される中空光ファイバーでも世界をリードする。同社の製品は通信遅延を31%低減し、非線形効果をほぼゼロに抑えることに成功。単一プリフォームから91.2キロメートルの光ファイバーを製造できる技術を確立し、累計出荷量は1万芯キロメートルを超え、世界最大の商用展開実績を持つ。
海外展開も加速している。長飛光繊は7カ国に9つの生産拠点を構え、光ファイバープリフォーム、光ファイバー、光ケーブルの世界シェアで10年連続首位を維持。華工科技も北米、欧州、アジアに7つの海外拠点を設置し、製品を90以上の国・地域へ供給している。
AI、光通信、6G、衛星インターネットという次世代産業の成長を背景に、武漢・光谷は中国最大の光電子産業拠点から、世界の光電子情報産業を支える戦略拠点へと進化を続けている。「中国光谷」から「世界光谷」への飛躍が、現実味を帯び始めている。
(中国経済新聞)
